中学入試の国語では、記述問題が合否を左右することも少なくありません。しかし、いざ記述となると、
- 「文章力がないから不安」
- 「感性やセンスが必要なのでは?」
と感じてしまう受験生・保護者の方も多いのではないでしょうか。
実は、入試国語の記述で求められているのは、派手な文章力でも特別な感性でもありません。本文中から答えになる部分を見つけ、必要な情報を整理してまとめる力があれば十分対応できます。
このページでは、実際の入試問題の例を使いながら、
- 入試国語の記述で本当に求められている力
- 説明文の記述での「イコール関係」の考え方
- 物語文の心情記述での「背景と出来事」の整理方法
- 記述問題ができるようになると客観問題も安定する理由
を、導入 → 原因 → 対処 → まとめの流れで整理して解説します。
中学入試の記述で本当に求められる力とは?
まず押さえておきたいのは、入試国語の記述で求められるのは、次のような力だということです。
- 文章力や感性ではなく、「答えを文中から見つける力」
なぜなら、多くの記述問題は、
- 本文中から答えにあたる部分を取り出し、それらをつなぎ合わせてまとめる形式
で作られているからです。
入試国語の記述で不可欠なのは、答えを文中から見つける力です。
ここからは、具体例を通して「答えの見つけ方」と「まとめ方」のポイントを見ていきます。

読解ラボ東京の『オンライン個別指導』:オンライン指導なら通塾時間は0分!
説明文の記述:イコール関係を探して組み立てる
例題:傍線部の内容を50〜60字で説明せよ
まずは説明文の記述問題から考えてみましょう。次のような問題が出題されていたとします。
説明文の記述では、
- 傍線部=イコールの内容を探すことが鉄則です。
ステップ①:「それ」が指す内容を本文から特定する
傍線部③の直前を読むと、「それ」が何を指しているのかが分かります。
- 「それ」=「人間は一人で生まれて一人で死ぬという考え」
したがって、
- 傍線部③=「人間は一人で生まれて一人で死ぬという考えは、生物学的に間違っている(X)」
という「イコールの関係」が見えてきます。
ステップ②:字数が足りないときは「理由」か「イコールの情報」を足す
しかし、Xだけでは50字に足りないことが多いです。こうしたときにやるべきことは決まっています。
- ✅ 自分の書いた内容の理由
- ✅ 自分の書いた内容とイコールの情報
のどちらか(または両方)を、本文から探して付け足すのです。
今回の例では、傍線部③の8行前に次の内容が書かれています。
「人間の体には、一億以上の生物が住んでいる(Y)」
この情報から、
- 人間は多くの生き物と共に生きている
- したがって、「一人で生きている」という考えは生物学的に誤りである
という構造が見えてきます。
ステップ③:X+Yで記述を完成させる
以上より、
- X:「人間は一人で生まれて一人で死ぬという考えは、生物学的に間違っている」
- Y:「人間の体には一億以上の生物が住んでおり、多くの生き物と共に生きているから」
という2つの要素を組み合わせれば、字数も内容も満たした記述答案が完成します。
採点者の視点で見ると、もし10点満点なら、
- Xを書けて5点
- Yを書けて5点
という配点になるイメージです。

このように、
- 記述問題は、本文中から答えになる個所を見つけ、必要な要素をつなぎ合わせて答えを作る問題
と言えます。したがって、やはり求められているのは、
- 「文中から答えを見つける力」であり、「感性」や「文章センス」ではありません。
物語文の心情記述:背景と出来事を整理する
では、物語文の心情を記述させる問題ではどうでしょうか。
多くの物語文では、登場人物の気持ちが「うれしかった」「悲しかった」と明示されていないことがほとんどです。そのため、
- 「これは感性やセンスがないと解けないのでは?」
と考えてしまいがちです。しかし、これも誤解です。
心情の記述でも、答えを文中から見つける作業が根幹を成します。
心情を考えるときは「背景」と「出来事」を整理する
物語文で心情を考えるときに重要なのは、
- 背景と出来事を整理すること
です。具体例で見てみましょう。
例題:少年Aが泣いたときの心情を答える
とある入試問題では、次のような状況が描かれていました。
- 背景:少年Aは「悪ガキ」として扱われ、大人たちから常に疑いの目で見られていた。
- 出来事:主人公の母親だけは、そうした先入観を持たずに少年Aに接してくれた。そのとき、少年Aは泣いた。
この「泣いた」という部分に傍線が引かれ、
という問題が出題されました。
背景と出来事を踏まえると、少年Aの気持ちは明らかです。
- 今まではずっと大人たちから疑われて過ごしていた(背景)
- しかし、主人公の母親は疑わずに接してくれた(出来事)
この流れから、少年Aは「うれしくて泣いた」のだと自然に分かります。
採点のイメージとしては、10点満点なら、
- 背景を書けて3点
- 出来事を書けて3点
- 「うれしい」という心情を書けて4点
という配分になるでしょう。

心情記述の鉄則:心情だけでなく「背景+出来事」も書く
要するに、
- 心情を記述する問題では、その心情を導くための「背景」と「出来事」をセットで記述する必要がある
ということです。
そして、この背景と出来事は、必ず本文のどこかに書かれています。つまり、
- 明示されていなくても、心情には必ず文中に根拠がある
のです。
記述と客観問題は「同じ力」で解ける
ここまで見てきたように、
- 説明文の記述 → 傍線部とイコールの内容+理由や関連情報を探して組み立てる
- 物語文の心情記述 → 背景と出来事を整理して心情を導き、セットで書く
というのが記述問題の基本的な考え方です。
重要なのは、これらの作業が、
- 選択肢問題
- 抜き出し問題
などの客観問題でもほとんど同じだという点です。
- 説明を求められたら「イコールの内容」を考える
- 心情を問われたら「背景と出来事」を整理する
これらは、記述だけでなく客観問題でも必要不可欠な手法です。
記述ができないという生徒さんは、そもそも客観問題をきちんと解けているのかをまず疑うべきでしょう。
逆に言えば、
- 記述問題をきちんと解けるようになれば、客観問題の正答率も安定する可能性が高い
ということでもあります。
まとめ:記述のカギは「文中から答えを見つける力」
中学入試の記述問題について、本当に大事なポイントを整理すると次の通りです。
- 入試国語の記述で求められているのは、特別な文章力や感性ではなく「答えを文中から見つける力」である。
- 説明文の記述では、傍線部とイコールの内容を本文から探し、字数が足りない場合は理由やイコールの情報を足してまとめる。
- 物語文の心情記述では、背景と出来事を整理し、それに基づいて心情(うれしい・悲しい など)を答える。
- 心情は明示されていなくても、文中に必ず根拠があるので、感覚ではなく本文に基づいて判断する。
- 記述問題で使う手法は、選択肢・抜き出しなどの客観問題と本質的には同じであり、記述が安定すれば客観問題の正答率も上がりやすい。
記述が苦手だと感じる場合は、
- 「センスがないから」とあきらめるのではなく、
- 本文中から根拠となる部分を探す練習
- 背景・出来事・イコールの関係を整理する練習
から始めてみましょう。
そうした積み重ねが、記述力だけでなく、国語全体の読解力を底上げしていくことにつながります。

読解ラボ東京の『完全1対1の個別指導』:点数の安定は解き方の習得から始まります!

