中学入試の国語では、物語文で登場人物の心情を問う問題が頻出です。しかし、
- 「気持ちの変化がよく分からない」
- 「なんとなく感覚で答えてしまう」
- 「同じ『泣いた』でも、嬉しいのか悲しいのか判断できない」
といった悩みを抱える受験生・保護者の方も多いのではないでしょうか。
物語文は一見「センス」や「感性」が必要なように見えますが、実は論理的な手順で読み解くことができます。このページでは、動画の内容をもとに、
- 物語文の基礎的な解き方
- 心情をつかむための「背景」と「出来事」の整理法
- 「なんとなく読む」解き方が危険な理由
- 中学入試の物語文に通用する実践的ポイント
を、導入 → 原因 → 対処 → まとめの流れで整理して解説します。
物語文の基本的な解き方
まずは「説明文的な問題」が土台になる
物語文と聞くと、「気持ちの読み取り」が真っ先に思い浮かびますが、その前に押さえるべきなのは、
- 物語文の中にも説明文的な問題がたくさん含まれている
という事実です。
「棒線部はどういうことですか?」
といった設問は説明文で頻出ですが、物語文でも同じように出題されます。この「どういうことか?」は、
「言い換えて説明しなさい」=イコールの関係をつくりなさい
という意味です。これは、
- 説明文でも物語文でも共通のルール
と言えます。
物語文にも、まず説明文的なアプローチがベースとしてある。
つまり、物語文だからといって特別な読み方をゼロから考える必要はありません。まずは、
- 「どういうことか?」=本文中からイコールの内容を探して言い換える
という説明文的な解き方を土台にすることが重要です。
そのうえで「気持ちの読み取り」に進む
物語文ならではの要素が、登場人物の気持ちの読み取りです。ただし、これも「感性」で解くものではありません。
気持ちを読み取るときは、必ず棒線の理由を追いかける。
この「理由を追う」ことが、後述する背景と出来事の整理につながっていきます。
心情読み取りの基本:背景と出来事を揃える
サピックスでも重要視される「背景」と「出来事」
物語文の心情を考えるとき、よく指導で使われるのが、
背景 と 出来事 を揃える
という考え方です。
例えば、次のような状況を考えてみましょう。
- 背景:志望校に合格した
- 出来事:泣いた
このときの気持ちは何かと言われれば、
→ 嬉しいに決まっています。
このように、
- 背景+出来事が揃っていれば、心情は自然と導けます。
出来事と背景の見つけ方(定義をはっきりさせる)
問題は、
背景と出来事をどうやって自力で揃えるか?
という点です。ここで必要になるのが言葉の定義です。
基本的な定義は次の通りです。
✅ 出来事の見つけ方
- 棒線そのものが「出来事」
- もしくは、棒線の「理由」が出来事
✅ 背景の見つけ方
- 出来事の理由が背景
先ほどの例に当てはめると、
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 出来事 | 泣いた(棒線部) |
| 背景 | 志望校に合格した(出来事の理由) |
となります。
棒線の理由を追えば、背景と出来事が揃い、気持ちがわかる。
物語文の気持ち読み取りは、
- 感性ではなく、論理
で行うものだという意識が大切です。
とにかく「棒線の理由」を追う。
それが物語文の気持ちを読み取るときの心構えです。
同じ「泣いた」でも背景によって心情は変わる
ここからは、背景の重要性をより具体的に確認してみましょう。
たとえば、文中で主人公が「泣いた」と書かれていたとします。このとき、主人公の気持ちは何でしょうか。
多くの生徒に尋ねると、
- 「悲しい!」
という答えが返ってきます。しかし、本当の正解は、
「まだ分からない」
です。なぜなら、背景が分からないからです。
例えば、次のような背景ならどうでしょうか。
- 背景:志望校に合格できた
- 出来事:泣いた
- 心情:うれしい
別の背景なら、次のようにもなります。
- 背景:ライバルよりもテストの点数が低かった
- 出来事:泣いた
- 心情:悔しい
もちろん、背景によっては「悲しい」という心情になることもあります。

このように、
- 同じ出来事(泣いた)でも、背景によっていだく心情はまったく異なる
ということが分かります。だからこそ、
- 常に背景を意識しながら読むこと
が物語文攻略につながります。
理由を問う問題では「心情=理由」になることもある
物語文では、
- 「なぜ〜したのですか。」
- 「そのときの理由を答えなさい。」
といった理由を問う問題もよく出題されます。
先ほどの「泣いた」という出来事の場合、その理由は何でしょうか。
- 悲しかったから泣いた
- うれしかったから泣いた
- 悔しかったから泣いた
というように、何かしらの心情が直接「理由」になっていることが多くあります。
つまり、
- 理由を問う問題でも、心情を正しく押さえていないと対処できない
ということです。したがって、物語文では、
- 心情をつかむことが大きなポイント
になります。

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「なんとなく読む」解き方の限界
感覚で解かせる指導・問題集の有効性は薄い
物語文の授業や問題集の中には、
- 「読んでいればこの気持ちでしょう」
- 「なんとなくこう感じるよね」
といった感覚に頼るスタイルも少なくありません。
「なんとな〜く解いている」先生・生徒・問題集は、実際かなり多い。
しかし、こうした指導は、
- 有効性が薄い
と考えざるを得ません。
大学入試現代文から逆算された「方法論」の重要性
中学受験の国語は、大人から見れば、
- 「そんなに勉強しなくても読める」
と感じられることも多いでしょう。特に国語の先生なら、もともと国語が得意な方が多いので、なおさらです。
ところが、大学受験の現代文──特に早稲田大学などの入試問題は、
文章が非常に抽象的で、内容も簡単には理解できない。それでも合理的に答えを導かなければならない。
という世界です。そこでは、
- 「なんとなく読める」だけでは通用しない
- 理解しにくい文章でも処理できる方法論が必要
になります。
こうした大学受験の指導経験の中で、
- 理解しづらい文章でも論理的に処理できる手順
を模索し、その方法論を中学受験に落とし込んだのが、今の物語文指導のベースになっています。
この方法なら、
- 生徒自身が再現性を持って答えを導くことができる
ようになります。
大人の読解力をそのまま子どもに当てはめるのは違う。
大人は経験値があるので「なんとなく」読めてしまいますが、受験生はそうはいきません。理解が追いつかない部分も多くあります。
だからこそ、受験生でも迷わず使える、
- 処理手順と思考の道筋(=再現性のあるアプローチ)
が不可欠なのです。
中学入試 物語文攻略の実践ポイント
ここまでの内容を踏まえたうえで、物語文を解く際の実践的なポイントを整理します。
① まず「説明文的な問題」をしっかり取る
- 「棒線部はどういうことですか?」などの設問では、イコールの内容を本文から探して言い換える。
- 物語文であっても、説明文と同じ言い換え・イコールの作業が基本。
② 棒線部の「理由」を追いかける
- 気持ちを問われたら、まず棒線の理由を探す。
- 理由をたどることで、出来事と背景が整理される。
③ 出来事と背景を整理してから心情を決める
- 出来事=棒線そのもの、またはその理由。
- 背景=出来事の理由(性格・家庭環境・状況などの情報)。
- 出来事と背景が揃った状態で、うれしい/悔しい/悲しいなどの心情を決める。
④ 理由を問われたときは「心情そのもの」が理由になっていないか確認する
- 「なぜ泣いたのですか?」と聞かれたら、悲しい・うれしい・悔しいといった気持ち自体が理由になっていることが多い。
- 出来事だけでなく、気持ちを理由として答える必要があるケースが多い。
⑤ 説明文的な手法(三段論法・ブロック分け)も忘れない
- 物語文のすべてが心情問題ではない。
- 三段論法やブロック分けなど、説明文で使う手法が必要な設問も出題される。
- 説明文の解き方を確立できていないために、物語文の得点が伸びないケースもある。
まとめ:物語文は「感性」ではなく「手順」で解く
物語文というと、
- 「感性が問われる」
- 「センスがないと解けない」
というイメージを持たれがちですが、本文で見てきた通り、実際には論理的な手順で攻略できる科目です。
- 物語文にも説明文的な設問が多く、「どういうことか?」=イコールの内容を本文から探して言い換える力が必要。
- 心情読み取りでは、棒線部の理由を追いかけ、出来事と背景をセットで整理することがカギ。
- 同じ「泣いた」という出来事でも、背景によって「うれしい」「悔しい」「悲しい」など心情は変わる。
- 理由を問う問題では、心情そのものが理由になっているケースが多く、気持ちを押さえていないと対処できない。
- 「なんとなく読む」指導では再現性がなく、受験生には処理手順と思考の道筋が必要。
物語文が苦手な場合は、まず「感性の問題」と片付けず、
- 棒線部の理由をきちんと追う
- 出来事と背景をノートなどに書き出して整理する
- そのうえで心情を一言で表す練習をする
といった手順の練習から始めてみてください。
論理的な読み方が身についてくると、物語文は「なんとなく読むもの」から「手順を踏めば点が取れる分野」へと変わっていきます。日々の演習の中で、ぜひ意識的に取り組んでみましょう。

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