説明文の解き方
夏井(中学受験専門 夏井算数塾 代表):
今回は、入試でも頻繁に登場する「説明文の解き方」についてお伺いします。
説明文には色んなアプローチがあると思いますが、基本的な考え方をざっくりと説明していただければと思います。
長島:
説明文の設問にも種類がありますが、代表的な解き方を三つご紹介します。
✅ ① 棒線部の 理由を答える問題
「棒線部の理由を説明しなさい」という問題が頻出です。
ただ、理由がすぐ見つかれば誰でもできてしまいます。少し難しい問題ではどうするかというと、
➡ 棒線部と同じ内容が書かれた場所を探します。
多くの場合、棒線部から少し離れた位置(10行ほど離れた場所など)にあります。
棒線部と内容が同じなら、その理由も同じだからです。
✅ ② 棒線部を 説明=言い換える問題
「棒線部はどういうことですか?」
これはつまり 説明=言い換え を求められています。
説明とは、イコールの内容を作ること。
例)
「イケメンとはどういうことですか?」
→ 「かっこいい男性」
どちらも“イケてる男子”というイコールの関係です。
本文の中から、棒線部と 同じ意味になる部分 を探します。
✅ ③ 棒線部を 分解して考える問題
棒線部が長くて一気に理解しづらい場合、
➡ 前半/中盤/後半 とブロックに分けて整理
すると、説明すべき内容が明確になります。
長島:
説明文の解き方は実際にはもっとたくさんありますが、まずはこの三つが「代表選手」です。
この三つが使えるようになるだけで、説明文の記述問題に対しての精度が一気に上がります。
注意ポイント
夏井:それらを使うにあたって、注意しなきゃいけないポイントはどんなものが考えられますか?
長島:まずは設問にちゃんと素直に答えるという所からです。
理由を聞かれる問題なのか、イコールの内容答えなきゃいけないのか、なにを求められているのかというのをまず認識します。
解き方はありますが、最初からその解き方を使おうと思う事は必ずしもないかもしれません。
例えば理由を聞かれた時に、まずイコールの内容を見つけるんだ、というアプローチを今紹介しましたが、最初は素直に理由を考えていけばいいと思います。
そこで理由は見つからなかったけど同じ内容があった、棒線とイコールの内容があったとなれば
じゃあここの理由を考えればいいじゃないか、というふうに話を展開していけばいいと思います。
なので、習った解き方を最初から使おうと意識する事は必ずしもないと思います。
まずは聞かれた事に素直に答えて、その中で習った解き方が使えるかも、と思える瞬間が出てくる感じなのだと思います。
答えを自分で言い換えるか文章中から見つけるかの見極め
夏井:例えば、問題の答えが散りばめられていて、
ここから拾っていけばいいという指導の仕方というのはよく聞く話ではありますが、
たまに自分で言葉を紡がないと答えにならないというケースもままあったりすると思います。
長島:そうですね。確かに私も原則、文章の中に答えはあるよ、と言います。
ですが、中には棒線を自分で言い変えなきゃいけない、という時もあります。
たまに生徒さんから、自分で言い換えればいいのか、文章から探せばいいのか
それはどうやって見極めるんですか?とご質問頂きます。
それは私も15年くらいこの仕事をしていますので、15年やっていれば分かります。
ですが、受験生に15年この仕事をしろというのも無茶な話ですから、生徒さんにはこう言います。
初めからそんなのは見えてくる訳ないだろ、と言います。
ただ、割合としては文章に書いてある事の方が多いです。ざっくり八割九割は文章から見つけます。
なので、まずは探しにいってくれて構いません。探しにいって見つからなかったら最後の手段として、自分で言い変え考えてみるか、というような優先順序を決めて頂ければ宜しいかなと思います。
説明文が理解できないときの対処法
夏井:例えば物語文と比べた時に、説明文は全くちんぷんかんぷんな事が書いてあるというのが
物語文よりは割合的に多いような気がします。
その、マジちんぷんかんぷんでやべえみたいな状態の時に
どういうアプローチをしていけばなんとか乗り切る事が出来るんでしょうか?
長島:それは学校側が設問を作ってくれていますので、視野を狭くしているというのが大切です。
結構長い文章が出題されますから、それだけ長いとちょっと全然思考が追いつかないとなると思いますが、設問ではこの棒線について考えて下さい、とわざわざ考える範囲を限定してくれています。
なので、問われた設問にちゃんと答えていくという形で、うまく視野を狭くしていくと、
棒線の理由はここだったのか、というふうに見える事もありますから、設問にちゃんと応える。
裏を返せば、視野をうまく狭くする、というのが一つの対処法だろうと思います。
夏井:視野を狭くするというのは、見る範囲を限定するという事です?
例えば棒線部の付近だけを眺めるという事でしょうか?
長島:必ずしもそうではないです。
棒線の理由を答えなさい、と言われたらとにかく棒線の理由を探すという事になります。
付近にヒントがある事も多いですが、それが必ずしも近くだけで解決する訳ではないので、
それもとにかく棒線の理由、棒線の理由、と目を皿のようにしておくという事です。
なので、狭くするのは場所の話ではなくて、これについて考えるんだ、というふうに考える事をシンプルにするという事だと思います。
中学受験 説明文のポイント
受験における説明文では、解法に基づいて答えを文中から見つけていくことが求められます。
たとえば、〇〇を説明せよという問題があったとしましょう。説明するということは、イコールの内容を答えるということです。というのも、「優秀」という言葉を説明せよと言われたら、「優れているということ」と答えれば正解ですが、両者は同じ意味なので、イコールで結べます。以上のことから、〇〇を説明せよと言われたらその〇〇とイコールの内容を見つければよいということになります。
では、どのようにしてイコールの内容を見つけるのでしょうか。よく使う手法を二つご紹介します。
一つめが三段論法です。たとえば、問題文の12行目に「Xとは〇〇である(①)」、20行目に「XはYという意味だ(②)」と書かれていたとしましょう。①より〇〇=X、②よりX=Yが成り立つとわかります。そうすると、〇〇とXが同じものですから、X=YのXは〇〇に置き換えられます。置き換えると、〇〇=Yとなります。以上より、〇〇とイコールなのはXとYですから、この二点を答えのポイントにすればよいのだとわかります。〇〇=Xで、X=Y、よって〇〇=Yが成り立つ。このような考え方を三段論法と呼びます。

二つめがブロック分けです。傍線部⑴「そういう日本が、いま、新たな半身だけの巨人に追い抜かれようとしている」を説明せよという問題が、とある学校の入試で出題されました。傍線部がこれだけ長いと、イコールになるところはなかなかありません。そういう時は「そういう日本が」をX、「いま、新たな半身だけの巨人に」をY、「追い抜かれようとしている」をZと置きます。まずXですが、傍線部の直前に注目するとX=「GDPが右肩下がりの日本が」なのだと分かります。また、傍線部の3行ほど前に新たな半身だけの巨人とは中国であると書かれていました。ですから、Y=「いま、中国に」となります。Zは「抜かれつつある」という内容です。これで傍線部⑴=「GDPが右肩下がりの日本が、いま、中国に抜かれつつある」だと分かりました。このように、傍線部を分解し、それぞれとイコールの内容を考え、それらをつなぐことでイコールの内容を把握する方法もあります。そして、この手法をブロック分けと呼びます。

今回ご紹介した三段論法やブロック分けは特定の文章でのみ使えるという類のものではありません。どのような文章でも使える普遍的な手法です。また、入試では如何なる文章が題材となるか分かりません。以上のことから、普遍的な手法の獲得が説明文の得点力を高める唯一の方法だと言えるでしょう。

