「記述力を向上させる」読解ラボ流のポイント

中学入試の記述力とは、本文根拠を答案にする力です

中学受験国語の記述問題で求められるのは、立派な文章を書く力や感性だけではありません。中心になるのは、本文中から答えに必要な要素を見つけ、設問に合わせて短くまとめる力です。

説明文の記述なら、傍線部と同じ内容を本文から探し、必要に応じて理由を足します。物語文の心情記述なら、人物の置かれていた状況と、気持ちが動いた出来事を本文から拾います。つまり、記述答案は「思いついたことを書く」のではなく、本文にある根拠を使って作るものです。

  • 説明記述:傍線部の内容を言い換え、理由や根拠を足して書く
  • 心情記述:人物の状況、出来事、気持ちをつなげて書く
  • 字数調整:足りないときは根拠を足し、多いときは重複表現を削る

記述問題では、いきなり書き始める前に、次の点を確認します。

  • 設問が「どういうことか」「なぜか」「どんな気持ちか」のどれを聞いているか
  • 傍線部の中にある指示語や抽象語が、本文のどこを受けているか
  • 答えに入れる根拠が、本文中にいくつあるか
  • 字数に対して、どこまで詳しく書けるか

この確認がないまま書くと、本文に書かれていない一般論を足したり、設問と違う内容を書いたりしやすくなります。

説明記述は「内容+理由」で作る

説明記述では、傍線部の内容を本文中の言葉で言い換えます。字数が足りない場合は、その内容を支える理由を本文から加えます。

設問例:傍線部「それは誤りである」とはどういうことか。40~60字で説明しなさい。

この問題では、最初に「それ」が何を指しているかを見ます。本文中に「人間は一人で生まれて一人で死ぬという考え」とあれば、それが説明すべき内容になります。

答案に入れる要素

  • 内容:人間は一人で生まれて一人で死ぬという考え
  • 理由:人間の体内には多数の生物が共生している

この2つをつなぐと、次のような答案になります。

答案例
人間は一人で生きるという考えは、体内に多数の生物が共生しているため誤りである。

ここでは、「何が誤りなのか」だけではなく、「なぜ誤りなのか」まで入っているため、説明記述として必要な要素がそろいます。

ある学校の入試問題で、傍線部③「生物学的にはそれは間違いである」を50~60字で説明せよ、という問題が出題されました。説明を求められたら、まず傍線部と同じ内容を本文中から探します。

傍線部③の直前を読むと、「それ」が指すのは「人間は一人で生まれて一人で死ぬという考え」だと分かります。これだけでも内容は取れていますが、50~60字の答案としては短すぎます。

そこで、本文中の別の根拠を探します。傍線部③の少し前には、人間の体には一億以上の生物が住んでいるという内容があります。つまり、人間は無数の生き物と共に生きているので、「一人で生きている」という考えは生物学的に誤りだと説明できます。

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このように、記述の問題は本文中から答えになる箇所を見つけ、それらをつなぎ合わせて作ります。文章力や感性だけではなく、答えを文中から見つける力が求められると言えるのです。

心情記述は「状況・出来事・気持ち」で作る

物語文の心情記述でも、答えは自由な想像ではありません。登場人物の気持ちは、本文中の状況や出来事を根拠にして考えます。

設問例:少年Aが泣いたのはどんな気持ちからか。30~50字で説明しなさい。

答案に入れる要素

  • 状況:少年Aは周囲から疑われ続けていた
  • 出来事:主人公の母親だけは先入観なく接してくれた
  • 気持ち:うれしさ、安心、救われた気持ち

この3つをつなぐと、次のような答案になります。

答案例
疑われ続けていたが、母親だけは先入観なく接してくれたので、うれしくて泣いた。

気持ちだけを「うれしかった」と書くと、根拠が足りません。反対に、出来事だけを書いても、問われている気持ちに届きません。心情記述では、気持ちの前に、本文中の状況と出来事を入れることが大切です。

物語文では、登場人物の心情が直接書かれていないことがあります。そのため、感性や文章力が問われるように見えるかもしれません。しかし、心情記述でも、答えを支える要素は本文中にあります。

たとえば、少年Aが悪ガキとして扱われ、大人たちから疑いの目を向けられていたとします。ところが、主人公の母親だけは先入観を持たずに接してくれました。そのとき少年Aが泣いたなら、背景と出来事から、少年Aはうれしかった、安心した、救われたと考えられます。

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要するに、心情を記述する問題では、その心情を導くための状況と出来事を記述する必要があります。そして、その状況と出来事は本文中に書かれています。明示されない心情であっても、答案の根拠は本文の中にあるということです。

記述と客観問題は別物ではありません

記述問題は、答えを文中から見つけて対応していきます。そして、答えとなる箇所を見つける考え方は、選択肢問題や抜き出し問題と大きく変わりません。

説明を求められたら、傍線部と同じ内容を探します。心情を問われたら、人物の状況と出来事を拾います。これは客観問題でも必要な読み方です。

そのため、記述が書けない場合は、文章表現だけを鍛える前に、本文から根拠を拾えているかを確認する必要があります。逆に言えば、記述問題を丁寧に練習すると、選択肢問題や抜き出し問題の精度も上がりやすくなります。

記述力を確認するためのセルフチェックと練習

記述が書きにくい場合は、答案の文末表現だけでなく、本文から必要な要素を拾えているかを見ます。

  • 答えに使った内容が、本文のどこに書いてあるか言える
  • 説明なら「何のことか」と「なぜそう言えるか」が分かれている
  • 心情なら、出来事だけでなく状況も本文から拾えている

この3項目があいまいな場合、記述力そのものより根拠を拾う段階でつまずいている可能性が高いです。

練習①:説明記述

設問例
傍線部「この考えは誤りである」とはどういうことか。

考えるポイント

  • 「この考え」が指す内容を一言で言い換える
  • その内容を支える本文中の理由を1つ探す

書き出し例
〜という考えは、本文に〜とあるため誤りである。

練習②:心情記述

設問例
少年Bが安心したのはどのような気持ちからか。

考えるポイント

  • その直前までの人物の立場や状況
  • 心情が変わるきっかけになった出来事
  • 最後に入れる気持ちの言葉

書き出し例
周囲から〜と思われていたが、〜してもらえたため、安心した。

この2種類の練習で書きにくい場合は、「書く力」以前に本文から要素を拾う精度を見直す必要があります。

記述力に関するよくある質問

Q1. 記述力は文章力やセンスですか

入試国語の多くは、本文根拠を拾って要素をつなぐ問題です。まずは説明=内容+理由、心情=状況・出来事・気持ちで点につながる答案を作り、表現の磨き込みはその後で十分です。

Q2. 字数が足りないとき、何を足せばいいですか

理由や根拠を足します。自分の感想や一般論を足すと本文から離れやすいので、本文の別箇所から同じ内容を支える根拠を1つ追加します。

Q3. 逆に字数が多いときはどう削りますか

同じことを言い換えて2回書いている部分、長すぎる主語、説明に直接必要ない修飾語から削ります。本文根拠そのものを先に削るのではなく、言い回しを短くすることから考えます。

Q4. 要素は拾えるのに答案がまとまりません

多くは、拾った要素を並べる順番が定まっていない状態です。説明なら内容→理由、心情なら状況→出来事→気持ちの順で並べると、答案が読みやすくなります。

Q5. 記述が苦手な子は、何から始めるべきですか

まずは、本文から根拠を拾う練習です。抜き出しや選択肢で根拠があいまいなままでは、記述でも要素が不足しやすくなります。根拠を拾い、必要な要素を2〜3個に絞り、短い答案にする練習から始めます。

まとめ:記述答案は本文根拠から作ります

  • 中学入試の記述力は、本文根拠を答案にする力です。
  • 説明記述では、傍線部の内容と理由を本文から拾います。
  • 心情記述では、人物の状況、出来事、気持ちをつなげます。
  • 字数が足りないときは、本文中の理由や根拠を足します。
  • 字数が多いときは、重複や不要な修飾を削ります。
  • 記述練習は、選択肢問題や抜き出し問題の精度にもつながります。

記述が苦手な場合でも、いきなり上手な文章を書こうとする必要はありません。まずは本文から答えに必要な要素を拾い、設問に合わせて並べることが大切です。

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