中学受験国語の過去問は何回解くべき?──同じ問題の繰り返しと類題演習のベストバランス
「国語の過去問は、どこまでやるべき?」「同じ問題を何度も解く意味はあるの?」――中学受験の国語対策で、多くのご家庭が抱える疑問です。
算数では「頻出分野の過去問を何度も繰り返す」ことに明確な効果がありますが、国語では事情が少し異なります。本ページでは、代表インタビューの内容をもとに、国語の過去問を解く本当の意義と、繰り返し演習の是非・効果的な活用法を整理してお伝えします。
代表インタビュー動画
国語の過去問を解く「本当の意義」
まず結論から言うと、国語の過去問を解くことには、明確な意味があります。
「もちろん意味があります。まず、問題形式を知るためです。」
国語の過去問で分かることは、主に次のような点です。
- 問題形式の把握
・記述が多いのか、選択問題中心なのか
・記述量(字数制限、設問数、部分点のつき方 など) - 文章量・構成の把握
・物語文と説明文の配分
・「物語文が長い」「説明文が短い」などの学校ごとの特徴 - 大問構成・出題パターンの把握
・大問の数、漢字・語句・記述・選択のバランス
・毎年出る「定番形式」があるかどうか - 時間配分の感覚をつかむ
・50分・45分といった試験時間の中で、どの大問にどれくらい時間をかけるか
・自分の読書スピードで「最後まで解ききれるか」の確認
このように、過去問演習には「志望校の形式や量に慣れる」という実戦的な意味があります。
まず鍛えるべきは「普遍的な読解力」
ただし、代表の長島は、国語における過去問演習について次のように強調しています。
「国語の場合、求められる力の本質はどの学校でも変わりません。」
記述式であれ選択式であれ、根本的に行っている作業は同じです。
- 本文中から答えになる場所を見つける
- その箇所の内容を整理し、設問に合うかたちでまとめる
この「本文中から根拠を見つけてくる力」は、学校が変わっても共通して求められる普遍的な読解力です。
したがって、最優先すべきは「どの学校にも通用する読解力を高めること」であり、学校別の細かい対策はそのあとという順番になります。
- ① 普遍的な読解力を鍛える(本文から根拠を探す力)
- ② 志望校の過去問で形式・量・時間配分を調整する
過去問はあくまで「仕上げの調整」として活用し、その前段階で読解の土台をしっかり作ることが重要です。

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国語にも「出題のクセ」はあるが、振り回されすぎない
算数では、「立体の切断が毎年出る」「速さは必ず出る」といった単元レベルの傾向に加え、問題の切り口そのものに「クセ」がある学校も多く見られます。
国語にも、確かに学校ごとの「クセ」は存在します。
- 棒線部のすぐ前後だけ読めば答えが出る問題が多い学校
- 明示的な接続詞ではなく、文脈のつながりを読ませる問題が多い学校
例えば、次のような文があったとします。
「一生懸命走った、なんとか間に合った。」
ここに「だから」は書かれていなくても、「間に合った」のは「一生懸命走ったから」だと自然に分かります。このように、接続詞がなくても前後関係から因果関係を読みとらせる問題を多く出す学校もあります。
こうした経験を積むことで、
- 「この学校は、棒線部の近くに必ず答えがあるな」
- 「この学校は、前後関係をしっかり追わせる傾向が強いな」
といった、ある種の「先入観」=目星のつけ方が見えてくることもあります。
この意味では、過去問を通じてその学校のクセに慣れることも、一定の意義があります。ただし、これもあくまで「普遍的な読解力」の上に乗る微調整という位置づけで考えるのが良いでしょう。
同じ国語の過去問を繰り返し解くことに意味はあるか?
算数と国語で「繰り返し」の意味は違う
算数では、同じ過去問を1〜2か月おいてから解き直す指導がよく行われます。
- 解法を忘れている生徒が多いので、「定着」のために繰り返す
- 「この50分をどう使うか」という時間感覚を身につけるため
一方で、国語の場合は事情が大きく異なります。
「国語の場合は、一度解いたことのある問題は文章の流れや設問の答えを記憶してしまいます。」
一度解いた文章は、
- ストーリーの展開やオチ
- 設問の答えやキーワード
を無意識のうちに覚えてしまっているため、「考えて解く」というより「思い出して埋める」作業になりがちです。これは、読解力や思考力を鍛えるという意味では効率がよくありません。
そのため、代表の長島は次のようにまとめています。
「中学受験の国語においては、過去問を繰り返し解くことに大きな意味はありません。」
例外的に「解き直し」が有効なケースもある
とはいえ、全ての解き直しが無意味というわけではありません。当塾の指導の中では、例外的に同じ問題をもう一度解いてもらうこともあります。
- 「本当に良問のオンパレード」の年度である
- 同じアプローチを何度も使うタイプの問題である
- その生徒が特にそのパターンを苦手としている
こうした場合には、
「このアプローチは本当によく使うから、もう一回やっておこうよ。」
と声をかけることもあります。
しかし、一般のご家庭だけで「この問題は定番アプローチだから、繰り返した方がよい」と見極めるのは、かなり難しいのが実情です。
そのため、家庭学習の方針としては、同じ過去問を何度も繰り返すより「類題をどんどんこなしていく」方が有効と言えるでしょう。
国語の過去問を「繰り返し」ではなく「活かす」演習法
1. 志望校の文章量と時間配分を把握する
過去問演習の第一の目的は、志望校の文章量と自分の読むスピードのギャップを知ることです。
- 文章量が多すぎて、最後の大問まで到達できない
- 読めていれば解ける問題なのに、時間切れで落としている
こうした場合、最優先すべきは「文章を読める速度を上げること」です。
- ただ速読するのではなく、自分が理解できる範囲でスピードを上げる
- 流し読みしてしまい、結局傍線部を何度も読み直すのは非効率
- 「自分にとっての最適なスピード」を過去問で探る
2. 出題パターンを把握し、弱点を明確にする
過去問を解く中で、次のような「弱点」が見えてくるはずです。
- 選択問題が苦手
→ 選択肢同士を比較して「決め手」を探す訓練が必要 - 記述問題が苦手
→ 文章中から根拠となる部分を抜き出し、要点を整理して書く練習が必要 - 字数指定に合わせるのが苦手
→ 言い換え・省略・追加の調整力を養う必要
特に難関校では、「一瞬で答えがわかる」ような易しい問題は少数です。多くの問題は、
- 本文の複数箇所を組み合わせる
- 選択肢の細かな違いを見比べる
といったプロセスが必要になります。日々の問題演習で「最適解を探す」トレーニングを重ねることが大切です。
3. 類題演習で「普遍的な読解力」を鍛える
同じ過去問を繰り返す代わりに有効なのが、「似た傾向の学校の問題をどんどん解いていく」という方法です。
- 志望校と文章量・難易度・設問形式が似た学校の過去問
- 同じタイプの記述や選択問題が多く出る模試・問題集
こうした類題演習をこなしていくことで、
- どんな文章でも本文中から根拠を探せる力
- 初見の問題でも落ち着いて対応できる思考力
が磨かれていきます。これは、どの学校の入試にも通用する「普遍的な読解力」そのものです。
4. 志望校別対策は「最後の調整」として行う
以上を踏まえると、国語の過去問演習の流れは次のようになります。
- まずは市販問題集や他校の過去問で読解の土台を作る
- 志望校の過去問を解き、形式・量・時間配分・出題パターンを把握
- 見つかった弱点を、類題演習で集中的に補強
- 入試直前期に、志望校の過去問で最終調整を行う
このように、「普遍的な読解力」と「学校別のクセへの慣れ」をバランスよく組み合わせることが、国語の合格点を安定して取る近道です。

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まとめ:国語の過去問は「繰り返し」より「活かし方」が重要
最後に、本ページのポイントを整理します。
- 国語の過去問を解くこと自体には、明確な意義がある。
→ 形式・文章量・大問構成・時間配分・出題パターンを知るため。 - 求められる読解力の本質は、どの学校でも同じ。
→ 記述でも選択でも、「本文中から答えになる場所を見つける力」が土台。 - 中学受験の国語では、同じ過去問を繰り返し解いても効果は限定的。
→ 一度解いた文章は内容や答えを覚えてしまい、「思い出す作業」になりがち。 - 例外的に、良問や定番アプローチの問題は解き直しが有効なこともある。
→ ただし、その見極めは家庭では難しいため、原則は類題演習が無難。 - 効果的な過去問演習のステップ
- 志望校の文章量と時間配分を把握し、自分の読むスピードとのギャップを確認
- 選択・記述などの弱点を過去問から洗い出す
- 似た傾向の他校問題・問題集で、読解力と解答力を鍛える
- 最後に志望校の過去問で、形式・時間配分・クセに慣れて仕上げる
- 効率的に受験勉強を進めるためには、過去問演習で弱点を補強し、全体の正答率を上げていくことが何より重要。
「国語の過去問を繰り返し解くかどうか」よりも、「過去問をどう活かすか」を基準に計画を立てていくことが大切です。普遍的な読解力と志望校別対策の両輪で、入試本番に備えていきましょう。
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