東大の国語について検討してみた(前半)【読解ラボ東京】【古典専門塾かきつばた】

夏井(中学受験専門夏井算数塾代表):2月25日に実施されました、東京大学入試の国語の問題についてになります。お二人に解いて頂きましたが、いかがでしたか?まずは、長島先生からお願いします。
長島:いい問題だったと思います。文章を読んでいて難しかったです。
何を言っているんだ、という感じでしたが、解き終わったあとにこういう事を言っているんだな、というのが見えてきました。
大問1だったら、仮面って結局何だったんだ?という事だとか、大問4であれば、言葉と他者の関係はこうだったのか、という読んでいる時は全然気付かなかった事が問題解き終わったあとに何を言っているかが見えてくるというような問題だったと思います。
そういった意味で非常にいい問題だと思います。問題を解いたらちゃんと本文の内容も理解出来るという事で、凄い練られた問題だなと思って解いていました。

夏井:岡部先生お願いします。
岡部(古典専門塾かきつばた代表):全体的な傾向として今年は簡単なのかな、という気がします。
特に指示内容がはっきりしないとか、探しづらいという事もなかったですし、文章そのものも例年通り平易な、簡単な文章だったという事が言えると思います。
なので、今年がちょっとかわいそうという事は特にないですね。
ご存知の通り物理がえらい事になっていたというような、何か特異な年だったという事は国語に関してはないのかなと思いました。

夏井:現代文が難しかったですか?文章が難しかったという事ですか?
長島:文章は難しいですが、現代文はそういうものですから、何か特別な傾向だとは思いません。
夏井:一方古文は例年通り平易な文章が出ていた形ですか?
岡部:そうですね。ここの所の傾向からすると、妥当というか、何か凄い読みづらい文章が出たという事は特にないと思います。
夏井:どれぐらいの点数が取れれば宜しいでしょうか?
岡部:古文に関しては、ケアレスミスや要求にちゃんと答えていないという所で減点が出てくると思いますので、とにかく回答は全部埋めて頂きたいです。
そうした所を含めて自分の他の科目との兼ね合いで何点必要なのかというのもあるでしょうが、
やっぱり六割から出来れば七割乗っけてくれるといいと思います。
大体いつもこのぐらいの問題という傾向であれば、六、七割はきちんと取りたいとは思います。
長島:現代文もここは書けないでしょう、という無茶な要素もなかったですから、七割ぐらい目指せるんじゃないかな、という印象があります。

現代文の全体的な傾向

夏井:まずは全体的な傾向という事で、現代文からお話を伺いたいと思います。
文章が難しかったという事ですが、傾向についてお話をお願いいたします。
長島:傾向としては、素直に聞かれた事を答える形です。
例えば、他者って何ですか?と言われたら他者の内容を探していこう、となっています。
大体東京大学は、傍線はどういう事ですか?という問題が中心です。
それは要するに、傍線を言い換えて下さいという事です。
なので、傍線の言い換えに当たる所を素直に探していけばいいというのが、東京大学の例年の傾向だと思います。
細かい所に入りますが、大問4の問いの1番だけがいくつか答えに使える候補の所がありました。
どこをチョイスするのかというのがちょっと悩ましい所がありました。
それ以外に関しては、素直にここを使えばいいんだね、というのが見つけやすいので、大問4の問1だけがちょっと難しかったかな、選びにくかったかなという印象があります。

夏井:具体的に、どういう難しさがありましたか?
長島:大問4の問1に関しては、具体抽象という考え方を持っていないと難しかったと思います。
要するに、あんまり具体的な事を書いちゃうと、じゃあこれは違うんですか?同じような話は他にもありますよね?と突っ込まれてしまいます。
なので、具体的な所が答えになってしまう場合は、それをざっくりまとめた所をチョイスするという判断をしなくてはいけません。
なので、この具体の所を書いてしまったらこういうケースもあるよね?と突っ込まれてしまうので、ここは使わないでおこうという判断が必要だったというのが大問4の問1です。
逆に、その判断の難しさが他の問題にはなかったので、そういった意味では素直な問題が多かったのかなというイメージをもっています。

夏井それは傾向としては例年通りの感じですか?
長島:そうですね。結論としては、東京大学の問題は傾向通りだと思います。
大問4の問1みたいに、要するにどこを使うのかの判断が難しい、あるいはこの言葉をそのまま使ってはいけなくて自分の言葉で言い直さなくてはいけない、というシチュエーションは二つあります。
一つが、比喩表現である事です。
比喩表現の場合、内容にどうしてもあやふやさが出るので、それはそのまま使ってはいけません。
もう一つが、今回の大問4問1で出た、具体と抽象の話です。
具体的な所をそのまま使ってはいけないという事です。
具体的過ぎるか、比喩表現というのは直さなければいけないです。
それは自分の言葉で直す時もありますし、本文のより適切な所を選ぶという判断をしなくてはいけない事もあります。
ざっくり2年に1問ぐらいそういう問題が出るかな?というのが東京大学のイメージです。
なので、そういう問題の割合が少なったというのは結論として、例年通りだったのかな?という感じがします。

文意を取ることは必要?

岡部:大問4の比喩というのは、割合に抽象度が高いというか若干飛躍に近いと言ってもいいかも知れないですが、高校生には随分読み取りづらいだろうな、と思いながら読んでいました。
その辺りはどうですか?
長島:東京大学の問題も含めてですが、文意を取る事がそんなに必要か?というのがイメージとして凄いあります。
設問で傍線を説明しなさいよ、と言われているから傍線の説明になっている所を探す訳です。
なので、むしろその文意を取ろうとする、という事を考えてしまうせいで頭がこんがらがるという
ケースの方が遥かに多い気がして、素直に聞かれた事に答えなさい、という事だと思います。
あえて文意を取るという所にフォーカスを当てるならば、大問1の最後の問題です。
漢字の手前の問題です。
本文全体を踏まえて120字ぐらいで記述しなさい、という問題です。
それは確かに文意を捉えて、というのと絡むかも知れないです。
今年の問題もそうですが、要するに答えが傍線の近くにあるとは限らないという事だと思うんです。
大問1の問4が、100字以上120字以内という問題です。
この問題は、二つの内容を本文から探さなければいけないと思います。
一つが異界、もう一つが自分自身です。
異界がページまたがっていて、結構前の所にあります。自分自身は傍線の10行前くらいです。
なので、問の4番ですら文意を取らなければいけないような感じがしますが、所詮答えになる所が離れているよ程度のもので、基本的には傍線の言い換えを探す、という所に集中すれば少なくとも点数は取れるという事です。それ以上の所に踏み込んではいけない気がします。
岡部:なるほど。
僕は四角1番の4番は、ちゃんと回答を作ってはいないですが、第2段落の話を絡めようかな、と
考えたんですが、そこはやっぱりそこまでしない方が回答としては綺麗ですか?
長島:まず字数の制約があります。
第2段落、「ただ」で始まる段落ですかね?確かに3行目は一応異界ですね。
岡部:普遍性みたいな話かと。
長島:普遍性は使わないと思います。
多分、これは優先順位の問題です。
基本私は生徒には、字数を増やそう思う時は理由を加えるか、イコールの内容を加えるかして、
より詳しい内容にしていこう、という話をします。
ただ、慶応大学の経済学部とか200字以内の記述とかやらなければいけません。
200字になってくると、理由やイコールの内容を加えても次数はまだ足りないです。
そうすると、第三の手として対比させるという観点が出てきます。
そうすると200字にいきます。
あの先生は怖いけどこの先生は優しい、みたいな感じで対比させるという事です。
普遍性になると、多分異界との対比という事になります。
なので、120字でそこまでする余裕はなかった、という事になるのかなという気がします。

模範解答を見ても分からない

夏井:今お話を聞いていてかつての私を思い出したんですが、過去色んな模擬試験で色んな現代文の回答を書き、その模範解答を眺めるという事をやっていました。
その中で、特に東大だとその傾向が顕著だったと思うんですが、問題文を読んでも意味が分からないし、模範解答を読んでもなお意味が分からないという事が結構ありました。
その時私が思った事は、元々の文章の意味分からないから模範解答も意味が分からない、意味分からない事としては答えが書けるかも知れないという考えでずっと勉強をしていました。
案の定落ちてしまいましたが、それについてはどう思われますか?
長島:まずその感じ方自体は私正しい気がします。
それは文章難しいですから、模範解答だけ与えられたら何言っているの?と感じるでしょうから、そう感じるのは間違っていないと思います。
ただ大切なのは、じゃあなんでこれを書かなきゃいけないの?という所を考えられたかです。
それは、ここが傍線の説明になっているから必要だとか、傍線の説明だけじゃ字数足らないから、それの理由が必要だから、だからここを書かなきゃいけないんだ、という事です。
なので、第一印象としてよく分からない事を言っているな、と感じるのはしょうがないと思います。
その上で受験生であるならば、じゃあなぜこれを書かなきゃいけないのか、その論理的な裏付けも含めて勉強して欲しいなと思っております。

抽象化する力は必要?

夏井:昔の私に伝えようと思います(笑)
今お話を伺って二つ目に思った事ですが、傍線部の近くに書いてある、遠くに書いてあるに関わらず、書いている事を適当にアレンジして答えを書くという事はなんとなく分かりました。
ですが、それをある程度具象化したものを抽象化した上で回答を書かなければいけない、というのは結構難しいなと思うんですが、東大に普通に合格する学生なら確実に正解しなければいけない問題ですか?
長島:非常に難しい所です。
合格最低点が大体六割ぐらいに落ち着くと想定するのであれば、いわゆる抽象化しなきゃいけない所、そこは落としていても六割以上の点数にはなるはずです。
だから単純計算ではその力はいらないという事になります。
ですが、合格してくれる方を見ていると、やっぱりその力はあります。
岡部:そうですね。
そもそもとして、文意が取れないというお子さんが受かっているのか?という所もあります。
どのレベルで内容を理解出来ているかはともかくとして、文意なんか取れなくても前後の指示内容を処理するだけで回答が作れるというアプローチでいいと思いますが、文章がちゃんと読めるようにはある程度いければいいんじゃないかな、とは思います。
長島:多分勉強していく時に、こうやればうまくいくというモデルがまず頭の中にある訳です。
それが言わば抽象だと思います。
それを実際に当てはめるというのが具体です。
だから、抽象と具体を見抜く力は勉強を効率的に進めていく上で必要不可欠です。
たまたまそれが問題を解く時にも国語だと出てくるという事だと思うんです。
なので、勉強の処理力とかを考えたら、その力は絶対必要です。
だからそれが出来ない子に東京大学の合格は難しいという事になると思います。
岡部:そうですね。
それはやっぱり全ての科目でそうした練習というのは要求されるだろうと思いますが、
特に国語に関してはそれを言語化しなきゃいけないという所でありますので、特に現代文の問題演習はかなり他の科目にも影響を与えるんじゃないかなと思います。
そこできちんと抽象的な表現というのを自分の言葉、あるいは本文中にある具体的なものと結び付けていくという練習をしていくという事がとても大事だと思います。
長島:例えば大問4の問の1番だったら、傍線あの言い換えですが、平和とか文化という言葉、平和通りとか文化通りというのを自分で体験していましたと、その事を1行目で具体的な経験でざっくりまとめているんです。そのざっくりまとめた方の言葉をチョイスしてくれという事です。
だからざっくりまとめた答えがあって、それの説明として細かな平和通りとかという言葉が出てきています。
そういう具体と抽象の構図が勉強を進めていく上でも実は同じ事をやっているんだよ、という事です。それをテストで具体的な形で発揮出来るかという事だと思います。

指導指針

国語力向上と受験成功を重視し、効果的な学習法を提供することに焦点を当てています。独自のアプローチと専門知識に基づき、受験生の国語力を伸ばし、自信を持たせることを目指しています。