東大の国語について検討してみた(前半)【読解ラボ東京】【古典専門塾かきつばた】

東大現代文の記述問題では、本文の内容を理解するだけでなく、設問に必要な根拠を選び、適切に言い換えて答案にまとめる力が求められます。

「本文はなんとなく読めるのに、傍線部をどう説明すればよいか分からない」「模範解答を見ると納得できるが、自分では必要な要素を選べない」という悩みを持つ受験生もいるでしょう。

この記事では、2023年度(令和5年度)の東京大学入試の国語を実際に解いた講師陣の対談をもとに、傍線部の言い換え、本文根拠の選び方、比喩表現の処理、具体と抽象の判断、字数内での要素選択、模範解答を使った復習について解説します。

特に、実際の東大現代文で講師がどの表現を答案に使うべきだと判断したのかを取り上げます。過去問を解くときだけでなく、解答後の復習にも役立ててください。

東大現代文の記述答案を作るときに確認したい6つのこと

東大現代文の記述では、文章全体の意味を考えることに加えて、設問で問われた内容に対応する本文根拠を選ぶ必要があります。

答案を作るときは、次の順番で確認すると考えやすくなります。

  1. 設問の要求を確認する:傍線部について、何を説明するよう求められているかを明確にする。
  2. 傍線部の近くを探す:同じ内容を説明している箇所や、言い換えに当たる表現を確認する。
  3. 離れた箇所も確認する:近くの説明だけでは足りない場合、本文の別の箇所から必要な根拠を探す。
  4. 比喩を説明語に直す:比喩表現が何を意味するのかを、本文に即して明確にする。
  5. 具体と抽象を判断する:個別の事例を書くべきか、それらをまとめた表現を使うべきかを考える。
  6. 字数内で要素を選ぶ:設問に必要な説明を優先し、理由や補足、対比をどこまで含めるか判断する。

大切なのは、本文の言葉を機械的につなぎ合わせることでも、自分の解釈を自由に書くことでもありません。設問に答えるために必要な内容を本文から選び、説明として伝わる形に整えることです。

記述答案の基本から確認したい方は、国語記述の書き方|本文の言葉で答える基本ルールと例文付き解説も参考にしてください。

東大現代文は傍線部説明が中心になる

東大現代文の傍線部説明と記述答案の考え方

東大現代文では、「傍線部はどういうことか」という説明問題が重要になります。

対談で長島先生は、東大の問題について、聞かれた内容に対応する本文中の説明を探すことが基本だと話しています。

長島:傾向としては、素直に聞かれたことを答える形です。例えば、他者って何ですか?と言われたら、他者の内容を探していこう、となっています。

大体東京大学は、傍線はどういうことですか?という問題が中心です。それは要するに、傍線を言い換えてくださいということです。

なので、傍線の言い換えに当たるところを素直に探していけばいいというのが、東京大学の例年の傾向だと思います。

ただし、本文の表現をそのまま答案に使えばよいとは限りません。長島先生は、特に判断が必要になるものとして、比喩表現と具体・抽象の関係を挙げています。

傍線部の近くに答えがある場合と、離れた箇所を使う場合

まずは傍線部の前後に、同じ内容を説明している箇所がないか確認します。

ただし、本文全体を踏まえる設問では、傍線部から離れた箇所にある説明を組み合わせる場合もあります。

対談では、2023年度の大問1問4の100字以上120字以内の記述問題が例として挙げられています。

長島:この問題は、二つの内容を本文から探さなければいけないと思います。一つが異界、もう一つが自分自身です。

異界がページをまたがっていて、結構前のところにあります。自分自身は傍線の10行前くらいです。

基本的には傍線の言い換えを探す、というところに集中すれば少なくとも点数は取れるということです。

この発言から分かるのは、根拠が傍線部の近くにあるかどうかよりも、設問に必要な説明になっているかどうかが重要だということです。

本文全体を読むことは大切ですが、答案では本文全体の印象をまとめるのではなく、問われた内容に関係する箇所を選びます。

比喩をそのまま書くと説明不足になる理由

比喩表現は、そのまま答案に使うと、何を意味しているのかが十分に伝わらない場合があります。

例えば、本文に「壁がある」という表現があったとします。

これをそのまま答案に書くだけでは、何の壁なのかが分かりません。本文の内容に応じて、「相手との関係を深めにくい心理的な隔たり」なのか、「制度上の制約」なのかを判断し、説明する必要があります。

もちろん、これは比喩の言い換え方を示すための一般的な例であり、実際の東大入試問題の答案ではありません。

長島先生も、比喩表現について次のように述べています。

長島:比喩表現の場合、内容にどうしてもあやふやさが出るので、それはそのまま使ってはいけません。

それは自分の言葉で直す時もありますし、本文のより適切なところを選ぶという判断をしなくてはいけないこともあります。

つまり、比喩を言い換える際は、必ずしも独自の表現を考える必要はありません。本文中により明確な説明があれば、それを根拠として使うこともできます。

具体と抽象を見分ける力は、東大現代文の記述で差が出る

東大現代文では、本文中の具体例をそのまま答案に書くと、設問で求められている内容よりも狭い説明になってしまう場合があります。

対談で長島先生が判断の難しさを挙げたのが、2023年度の大問4問1です。

長島:大問4の問1に関しては、具体と抽象という考え方を持っていないと難しかったと思います。

あんまり具体的なことを書いてしまうと、じゃあこれは違うんですか?同じような話は他にもありますよね?と突っ込まれてしまいます。

なので、具体的なところが答えになってしまう場合は、それをざっくりまとめたところを選ぶという判断をしなくてはいけません。

「平和通り」「文化通り」の例から考える本文根拠の選び方

大問4問1について、長島先生は次のように説明しています。

長島:例えば大問4の問の1番だったら、傍線の言い換えですが、平和とか文化という言葉、平和通りとか文化通りというのを自分で体験していましたと、そのことを1行目で具体的な経験でざっくりまとめているんです。

そのざっくりまとめた方の言葉を選んでくれということです。

だからざっくりまとめた答えがあって、それの説明として細かな平和通りとかという言葉が出てきています。

この発言を、答案に使う根拠の選び方として整理すると、次のようになります。

  1. 候補を確認する:本文には「平和通り」「文化通り」という個別の経験と、それらをまとめた表現がある。
  2. 具体例をそのまま使うべきか判断する:個別の名称だけを書くと、説明の対象が特定の経験に限定される可能性がある。
  3. 設問に合う表現を選ぶ:傍線部が個別の経験をまとめた内容を問うているなら、それらを抽象化した本文中の表現を優先する。

ここで重要なのは、具体例を答案から必ず除外するということではありません。設問が個別の事例を求めている場合は、具体的な説明が必要です。

一方、複数の具体例に共通する内容を問われている場合は、それらをまとめる上位の表現を選ぶ方が、設問に対応した答案になりやすいということです。

なお、ここでは講師の発言から判断過程を整理しています。実際の問題文と設問を照合した模範答案や採点基準を示すものではありません。

抽象化する力は、問題演習にもつながる

対談では、具体と抽象を見分ける力が、現代文の記述だけでなく学習全体にも関係することが語られています。

長島:多分勉強していく時に、こうやればうまくいくというモデルがまず頭の中にある訳です。それが言わば抽象だと思います。それを実際に当てはめるというのが具体です。

だから、抽象と具体を見抜く力は勉強を効率的に進めていく上で必要不可欠です。

岡部:特に国語に関してはそれを言語化しなきゃいけないというところでありますので、特に現代文の問題演習はかなり他の科目にも影響を与えるんじゃないかなと思います。

そこできちんと抽象的な表現というのを自分の言葉、あるいは本文中にある具体的なものと結び付けていくという練習をしていくことがとても大事だと思います。

記述問題では、抽象的な言葉を使うこと自体が目的ではありません。本文の具体的な内容と対応させながら、設問に適した表現を選ぶことが大切です。

本文全体を踏まえ、設問に必要な根拠を選ぶ

東大現代文で文意と設問対応を考えるイメージ

文章の内容を理解することと、設問に答えることは対立するものではありません。

ただし、文章全体の意味を完全に説明しようとするあまり、設問で何を聞かれているのかを見失わないことが大切です。

対談では、岡部先生が大問4の比喩表現の読み取りにくさについて質問しています。

岡部:大問4の比喩というのは、割合に抽象度が高いというか若干飛躍に近いと言ってもいいかも知れないですが、高校生には随分読み取りづらいだろうな、と思いながら読んでいました。その辺りはどうですか?

長島:東京大学の問題も含めてですが、文意を取ることがそんなに必要か?というのがイメージとしてすごくあります。

設問で傍線を説明しなさいよ、と言われているから傍線の説明になっているところを探す訳です。

なので、むしろその文意を取ろうとする、ということを考えてしまうせいで頭がこんがらがるケースの方がはるかに多い気がして、素直に聞かれたことに答えなさい、ということだと思います。

この考え方は、本文理解を不要とするものではありません。本文を読みながら設問との対応関係を確認し、必要な内容を答案にまとめるという、記述問題における優先順位を示しています。

120字記述では何を優先するか

東大現代文の記述では、設問に必要な要素を選ぶだけでなく、指定字数に収める判断も必要です。

対談では、大問1問4の100字以上120字以内の記述について、どこまで内容を含めるかが話題になりました。

岡部:僕は四角1番の4番は、ちゃんと解答を作ってはいないですが、第2段落の話を絡めようかな、と考えたんですが、そこはやっぱりそこまでしない方が解答としては綺麗ですか?

長島:まず字数の制約があります。

岡部:普遍性みたいな話かと。

長島:普遍性は使わないと思います。多分、これは優先順位の問題です。

基本私は生徒には、字数を増やそうと思う時は理由を加えるか、イコールの内容を加えるかして、より詳しい内容にしていこう、という話をします。

ただ、慶応大学の経済学部とか200字以内の記述とかやらなければいけません。200字になってくると、理由やイコールの内容を加えても字数はまだ足りないです。

そうすると、第三の手として対比させるという観点が出てきます。

普遍性になると、多分異界との対比ということになります。なので、120字でそこまでする余裕はなかった、ということになるのかなという気がします。

この発言で重要なのは、字数が増えたら機械的に理由や対比を追加するということではありません。

まず設問に直接答える内容を確保し、必要な根拠が不足していれば理由や補足を加える。対比についても、設問との関係と字数の余裕を踏まえて判断するという考え方です。

字数の例 要素を選ぶ考え方 注意点
60字程度 設問に直接答える説明を中心に、必要な要素を絞る。 短くても設問が理由を求めていれば省略しない。
100〜120字程度 中心となる説明に加え、必要に応じて理由や本文中の別の根拠を組み合わせる。 字数があるからといって、不要な対比まで加えない。
200字程度 設問要求に応じて説明を詳しくし、必要であれば対比も検討する。 対談では他大学の記述例として言及されており、東大の字数設定を示すものではない。

この表は、字数ごとの固定的な答案構成を示すものではありません。実際には、設問の要求と本文根拠を優先したうえで、指定字数に応じて説明の詳しさを調整することが必要です。

模範解答を見ても分からないときは、根拠の位置を確認する

東大現代文の過去問では、模範解答を読んでも、なぜその内容を書く必要があるのか分からない場合があります。

対談では、夏井先生が自身の受験経験を振り返り、本文も模範解答も十分に理解できないまま勉強していたことについて質問しています。

夏井:問題文を読んでも意味が分からないし、模範解答を読んでもなお意味が分からないということが結構ありました。

その時私が思ったことは、元々の文章の意味分からないから模範解答も意味が分からない、意味分からないこととしては答えが書けるかも知れないという考えでずっと勉強をしていました。

案の定落ちてしまいましたが、それについてはどう思われますか?

長島:まずその感じ方自体は私は正しい気がします。それは文章が難しいですから、模範解答だけ与えられたら何言っているの?と感じるでしょうから、そう感じるのは間違っていないと思います。

ただ大切なのは、じゃあなんでこれを書かなきゃいけないの?というところを考えられたかです。

それは、ここが傍線の説明になっているから必要だとか、傍線の説明だけじゃ字数が足らないから、それの理由が必要だから、だからここを書かなきゃいけないんだ、ということです。

なので、第一印象としてよく分からないことを言っているな、と感じるのはしょうがないと思います。

その上で受験生であるならば、じゃあなぜこれを書かなきゃいけないのか、その論理的な裏付けも含めて勉強して欲しいなと思っております。

この発言は、東大現代文の復習で特に重要な視点です。

模範解答の文章を覚えるのではなく、その答案に含まれている各要素が、なぜ必要なのかを本文に戻って確認することが大切です。

模範解答の各要素と本文根拠を対応させる

過去問を解いた後は、次の項目を確認してみてください。

  • 模範解答の各要素は、本文のどこに対応しているか。
  • 傍線部の言い換えになっている部分はどこか。
  • 理由や同内容の補足として加えられている部分はどこか。
  • 自分の答案で抜けた要素は、本文のどこから拾えたか。
  • 比喩をそのまま使ったり、具体例を必要以上に並べたりしていないか。
  • 指定字数の中で、必要な要素を優先できていたか。

例えば、模範解答を「傍線部の言い換え」「理由」「本文中の離れた箇所から拾った内容」に分けて考えると、自分がどの段階で判断を誤ったのかを確認しやすくなります。

本文の根拠は見つけていたのに、適切に言い換えられなかったのか。それとも、必要な根拠そのものを見落としていたのか。この違いによって、次の演習で意識すべきことも変わります。

過去問の解き直しを詳しく確認したい方は、現代文の復習方法|解き直しと本文根拠の確認も参考にしてください。

また、自分の答案に必要な要素が入っているかを確認したい場合は、国語記述の自己採点と要素採点の考え方で、答案を要素ごとに見直す方法を確認できます。

対談動画と講師による出題傾向の振り返り

ここまでの解説は、2023年度の東大入試を実際に解いた講師陣の対談をもとに整理したものです。傍線部説明や具体と抽象、字数内での答案作成に関する発言は、記事前半の各解説で紹介しています。

ここでは対談動画とともに、当時の国語の難易度や現代文の出題傾向について語られた部分を抜粋して紹介します。対談全体の内容を確認したい方は、動画もあわせてご覧ください。

講師による東大国語の難易度と出題傾向の振り返り

夏井(中学受験専門夏井算数塾代表):2月25日に実施されました東京大学入試の国語についてになります。お二人に実際に解いていただきましたが、いかがでしたか?まずは長島先生からお願いします。

長島:良問だったと思います。文章は読んでいて難しかったです。

「何を言っているんだろう?」という感覚がありましたが、解き終わったあとに、ようやく筆者の意図がクリアに見えてきました。

例えば、大問1では「仮面とは結局何なのか」、大問4では「言葉と他者の関係はこういうことか」と、読み進めている最中は掴みづらい内容が、問題を解くことで理解が深まる構成でした。

そういった意味で非常に良くできた問題だと思います。問題を通して本文理解が進むように作られていると感じました。

夏井:岡部先生お願いします。

岡部(古典専門塾かきつばた代表):全体的な印象としては、今年は比較的易しめだったのではという気がします。

指示内容が曖昧で探しづらいということもなく、文章自体も例年通り読みやすいものでした。国語に関しては例年通りだと思います。

夏井:現代文は難しかったということですか?文章が難しかったという意味でしょうか?

長島:文章自体は難しいです。ただ、現代文ではそれが普通なので、特別な傾向という感じではありません。

夏井:点数としては、どれくらい取れると理想でしょう?

長島:現代文も、無茶な要求をされている設問はありませんでした。七割程度は目指せる問題だったと思います。

このように、講師の間でも文章の読みやすさについては異なる印象が語られています。

一方、現代文の記述については、傍線部に対応する説明を本文から探し、設問に必要な要素を選ぶことが重要だという考え方が示されています。

なお、ここでの難易度や得点に関する発言は、対談で扱われた入試問題についての講師の見解です。すべての年度に共通する得点目標や難易度を示すものではありません。

東大現代文の記述対策に関するFAQ

自分の記述答案はどう自己採点すればよいですか?

模範解答と文章表現が完全に一致しているかだけでなく、設問に必要な要素が入っているかを確認します。傍線部の言い換え、理由、本文中の根拠などに分けて、自分の答案に何が含まれ、何が不足しているかを見直してください。ただし、実際の配点や採点基準が分からない場合、正確な得点を断定することはできません。

東大現代文の記述対策は独学でもできますか?

過去問演習と復習は独学でも進められます。まずは自分の答案、模範解答、本文根拠を対応させ、必要な要素を選べていたか確認してください。根拠の選択や言い換えの適切さを自分で判断しにくい場合は、第三者に答案を見てもらう方法もあります。

模範解答と表現が違っていても部分点は取れますか?

模範解答と異なる表現でも、設問に必要な内容を適切に説明できている可能性はあります。ただし、実際にどの程度評価されるかは、問題の要求や採点基準によります。表現の一致だけでなく、本文根拠と必要な説明要素が含まれているかを確認することが大切です。

東大現代文の記述対策で大切なこと

東大現代文の記述では、文章の難しさに意識を向けるだけでなく、設問に必要な本文根拠を選び、適切な言葉で説明することが重要です。

傍線部の言い換えを探し、必要に応じて離れた根拠も確認する。比喩は意味を明確にし、具体例と抽象的な表現を使い分ける。そして、設問要求と字数に合わせて答案に残す要素を選ぶ。この一連の判断を過去問演習で意識してみてください。

模範解答を見た後も、正解の文章を覚えるのではなく、「なぜその要素が必要なのか」を本文に戻って説明できるようにすることが、次の記述問題に向けた復習につながります。

自分の答案だけでは改善点を判断できない場合

本文根拠を確認し、模範解答とも比較したうえで、「この表現で部分点が取れるのか」「どこまで言い換えるべきか」「何が不足しているのか」を自分では判断しにくい場合があります。

東大・国公立大の現代文記述について、実際に書いた答案をもとに1対1で確認したい方は、大学受験オンライン個別指導の現代文記述添削をご確認ください。

東大現代文の過去問演習に役立つ関連ページ

今の答案で困っていることに合わせて、次に確認する内容を選んでください。

出版

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