国語の記述問題はこう自己採点する|採点基準の考え方と部分点の付け方【中学受験〜模試】
「国語の記述問題を自分で採点できるようになってほしい」「でも、親がどう点数をつければいいのか分からない」──そんなお悩みはありませんか。
国語の記述問題は、なんとなく「先生しか採点できない特別なもの」と思われがちですが、実際にはポイント(要素)ごとに配点が決まっている「要素採点」で行われます。この仕組みを知り、家庭学習の中で自分で採点する経験を積むことが、記述力を伸ばす近道になります。
このページでは、代表・長島へのインタビュー内容をもとに、
- 国語の記述が「要素採点」であるという基本
- 過去問など採点基準が載っていない問題の扱い方
- 実際の入試問題(麻布中)の具体的な採点例
- 家庭で自己採点を進める際のポイントと注意点
を、導入 → 原因 → 対処 → まとめの流れで整理して解説します。
動画で解説:国語の記述問題を自分で採点しよう
まずは動画で全体の流れをつかんでから、本文の具体的な解説を読んでいただくと理解が深まります。
国語の記述は「要素採点」で考える
記述は「書けた内容ごとに点数が決まる」
代表・長島は、国語の記述について次のように説明しています。
「基本的に国語の記述は要素採点です。この言葉を書けたら何点、この内容を書けたら何点、という形です。」
具体的には、
- ある要素を書けたら+3点
- 別の要素が書けたら+4点
- 最後の要素が書けたら+3点
といった形で、「どの内容を書けたか」に応じて点数が積み上がる仕組みになっています。
この要素採点を意識することで、
- 「なんとなく長く書いたから点がもらえる」ではなく、「どの内容を書いたから何点とれたか」を自分で判断できるようになる
- 「要素を捉える」という発想が身につき、答案を組み立てる力が大きく伸びる
といったメリットがあります。
予習シリーズ・SAPIXのテキストは配点が明示されている
代表的な中学受験用教材として、
- 予習シリーズ
- SAPIX の B テキスト
などがありますが、これらの多くは、
- 「ここで3点」「ここで4点」「ここで2点」
という形で、どの要素が何点かが明示されているものが少なくありません。
このような教材を使うと、
- 「ここは3点分は書けている」「ここは2点分足りない」
といった自己採点を、子ども自身の手で行うことができます。むしろ、
「自分で採点できるようにならなければなりません。」
というくらい、自己採点の経験は国語力に直結する重要なステップだと考えられます。
採点基準がない過去問はどう扱う?
保護者が「要素の分け方」だけサポートする
一方で、過去問などでは、模範解答はあっても「何点をどう配分しているか」が書かれていないことがほとんどです。その場合、どうすればよいのでしょうか。
「そこで保護者様のお力を借りたいと思っています。」
大人が文章を読めば、句読点などを手がかりに、
- 「この3つの内容を書いてほしいのだな」
というように、ある程度の要素の分解はできます。完璧である必要はありません。
例えば、
- 10点の記述なら「3点+3点+4点」に分ける
- 9点で要素が3つなら「3点ずつ」にしてみる
といった形で十分です。採点の土台となる要素分けだけを保護者が決めてあげて、
- 「ここは3点分書けたかな?」
- 「この部分はまだ足りないな」
と実際の採点はお子さま自身にやってもらうのが理想的です。

具体例:麻布中の記述問題を要素採点で見てみる
設問の概要と3つの要素
ここでは、麻布中学で過去に出題された物語文の記述問題を例に、要素採点の考え方を確認します。
問題は、主人公の牛の気持ちを記述させるもので、傍線部には「うんざりした」という表現が使われていました。
牛は、
- 「木に登って眠る」という特殊な習性を持っており、それをずっと隠していた(=秘密)
- その秘密を狸に知られて馬鹿にされてしまう
- その結果、うんざりしてテンションが下がる気持ちになる
この問題を要素採点で考えると、次の3つに分けられます。
- 要素① 背景(秘密)
└ 「牛は木に登って眠ることを秘密にしていた」… 3点 - 要素② 出来事(馬鹿にされた)
└ 「その秘密を狸に知られ、馬鹿にされた」… 3点 - 要素③ 気持ち(うんざり・憂鬱)
└ 「馬鹿にされて、うんざりして気が滅入っている(憂鬱になっている)」… 4点
授業では分かりやすくするために、上の3つで合計10点という設定にしています。
「怒っている」はズレた気持ちになる理由
多くの受験生は、
- 背景(秘密)と出来事(馬鹿にされた)をそろえると、
「狸に対して怒っている」と考えてしまいがち
しかし、ここで大切なのは傍線部そのものの言葉です。
「うんざりしています。テンションが下がっているので、怒りじゃないんです。」
「怒っている」は、感情として方向が違っているので、この問題では気持ちの要素としては点数がもらえません。
また、「もう狸のことを許せない」といった表現についても、
- 「許せない」は気持ちを表す言葉としては扱われにくい
- 入試の採点では、「うれしい・悲しい・恥ずかしい」などのように、一言で気持ちを表す語が重視される
という点も押さえておきましょう。

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生徒答案例と点数のつけ方
実際の生徒答案をいくつか見ながら、要素採点をしていきます。
例①:出来事だけは書けているケース
答案の一部:
「狸が『木に登って眠るなんて信じられない』と言って、笑ってきたので、怒っている。」
この答案では、
- 「狸が信じられないと言って笑ってきた」
→ 馬鹿にされたという出来事の要素は捉えられている(3点) - しかし、「怒っている」という気持ちはズレているため、気持ちの要素は0点
結果として、出来事の3点だけゲットとなります。
例②:背景+出来事はOKだが、気持ちの表現が不適切なケース
答案の一部:
「木に登って眠るという秘密を狸が馬鹿にしてきたので、もう狸のことを許せない。」
この答案では、
- 「木に登って眠るのは秘密だった」… 背景(3点)
- 「それを狸に馬鹿にされた」… 出来事(3点)
- 「もう狸のことを許せない」… 気持ちとしては認められない
よって、背景3点+出来事3点=6点という採点になります。
例③:出来事+気持ちだけを書いたケース
答案の一部:
「狸に笑われたので、うんざりしてしまい、ゆううつになっている。」
この答案では、
- 「狸に笑われた」… 馬鹿にされたという意味で出来事(3点)
- 「うんざりしてしまい、ゆううつになっている」… 気が滅入る気持ちとして4点
ここで重要なのは、
- 同じ気持ち(うんざり・ゆううつ)を二つ書いても、点数が倍にはならない
という点です。
「4点の気持ちを二つ書いたところで8点にはなりません。これはセットで4点ということで許してください。」
したがって、この答案は出来事3点+気持ち4点=7点となります。
例④:背景+出来事+気持ちの3要素がそろった満点答案
模範的な答案の一例:
「木に登って眠るのは秘密だったのに、それを狸に知られ、馬鹿にされたため、気が滅入っている。」
この答案では、
- 「木に登って眠るのは秘密だった」… 背景(3点)
- 「それを狸に知られ、馬鹿にされた」… 出来事(3点)
- 「気が滅入っている」… うんざりしている気持ち(4点)
と、3要素すべてがそろっているため、10点満点と評価できます。

記述採点の実務的ポイント
同じ単語でなくても「意味合い」が同じならOK
保護者の方からよくある心配として、
- 「模範解答と同じワードが入っていないと丸にしづらい」
というものがあります。
これに対して、長島は次のように述べています。
「全く綺麗に同じ言葉を使っていなかったとしても、意味合いとして同じ事であればいいと思います。」
たとえば、本文に「馬鹿にされた」とあり、答案に「笑われた」と書いてあっても、
- 本文中にも「笑われた」という表現がある
- 趣旨として「馬鹿にされた」と同じ意味で使われている
のであれば、同じ要素として認めてよいと考えられます。
実際、学校側も
「なんとか点数をあげたいな」と思って採点してくれている
ことが多いため、趣旨を正しく捉えていれば点はくれると考えてよいでしょう。
国語の記述は2文に分けても減点されない
もう一つのポイントは、答案を1文で書かなければいけないわけではないということです。
「国語の回答は2文に分けてもらっても構いません。」
むしろ、1文で無理やりまとめようとして、
- 「変な日本語になってしまう」
ケースの方が問題です。
2文で書くことのデメリットは、
- 字数がかさむため、短い字数制限(例:45字程度)の場合は、要素の一つを書き切れないリスクがある
一方で、
- おおよそ80字を超えてくる字数指定なら、2文に分けても要素を逃すことは少ない
というのが講師側の感覚です。
まとめると、
- 日本語として不自然になるくらいなら2文に分けてしまってよい
- ただし、字数が短いときは1文でコンパクトにまとめる練習も必要
というスタンスで考えるとよいでしょう。

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自己採点のコツ:「丸だけ」はNG、理由まで言語化する
最後に、家庭で自己採点を進めるときの心構えについてです。
「採点の丸だけ、だけはやめてください。」
点数をつけるときには、
- 「ここの部分は要素①を書けているから3点」
- 「この表現は趣旨がズレているから0点」
というように、なぜその点数になるのかを説明できることが大切です。
子ども自身も、
- 「ここはばっちり点数をもらえているよね」と自分で確信を持てる部分と、
- 「ここは点数をもらっていいのか迷うな」というグレーゾーン
を区別できるようになると、質問の質が上がります。
「ここの部分あるように思うんだけど、点数つけていいかな?」という質問はOKです。
こうした質問ができる生徒は、むしろレベルが高いと言えます。迷う部分は、
- 塾の先生に聞く
- 保護者の方と一緒に考える
などしながら、自分の基準を少しずつ育てていきましょう。

まとめ:要素採点を味方につけて、記述力と自己採点力を伸ばそう
- 国語の記述問題は「要素採点」で行われ、どの内容を書けたかによって点数が積み上がる。
- 予習シリーズや SAPIX の B テキストのように、配点が明示されている教材を使えば、子ども自身が要素を意識しながら自己採点できる。
- 過去問など採点基準が書かれていない場合は、保護者が要素をざっくり分ける役割を担い、実際の採点は子どもに任せるのがベスト。
- 麻布中の記述問題の例のように、背景(秘密)・出来事(馬鹿にされた)・気持ち(うんざり・憂鬱)の3要素を押さえることで満点答案に近づく。
- 気持ちの表現は、「怒っている」「許せない」よりも、「うれしい」「悲しい」「恥ずかしい」「憂鬱だ」などの一言で気持ちを表す語が重視される。
- 模範解答と全く同じ言葉でなくても、「意味合い」が同じなら要素として認めてよい。学校も「なんとか点をあげたい」と考えて採点している。
- 国語の記述は2文に分けても減点されない。日本語として不自然にならないことを優先しつつ、字数に応じて1文・2文を使い分ける。
- 自己採点では、ただ丸をつけるだけでなく、「なぜその点数になったのか」を言語化することが重要。迷う部分は積極的に質問して基準を育てていく。
要素採点の考え方を知り、家庭学習の中で「自分で採点する」経験を重ねることで、記述力だけでなく、自分の答案を客観的に見る力も育っていきます。ぜひ、今日の学習から「要素」を意識した記述と自己採点にチャレンジしてみてください。


