■難しい問題に時間を取られるのはとてもイヤだ!【大学入試共通テスト(国語)考察②】
夏井(中学受験専門夏井算数塾代表):現代文の話を進めたいと思います。
時間が掛かる問題と、あっさり処理出来る問題というのがあったと思います。
具体的にはどんな感じの問題になりますでしょうか?
長島:具体的にいきます。
まず大問1の問5です。大問1の問5は答えの要素が二つあります。
一つが、視点が動かない事です。
この視点が動かないという内容がすぐ見つかるので、じゃあ視点が動かないという内容の選択肢を
選ぼうと思います。
でも、それはどの選択肢も書いてあるからそこで困るはずです。
実は視点が動かない以外にもう一つ、沈思黙考の時間なんだという内容が答えとして必要です。
それもある選択肢はどれかな、と選んでいくと3を選べます。
要するに、答えの要素が複数ありプロセスが長くなりますので時間が掛かるというのが第一です。
あとは、さっき話で出てきましたが、問の6番の括弧3です。
これはもう1回複数、文章1文章2でどういう事を言っていたかなというのをチェックしなければいけないですから、そこは時間が掛かる問題だと思います。
時間が掛かる問題はそういった所になります。
夏井:どうやって見極めたらいいですか?
長島:見極める必要はない気がしています。
それは解いていたら時間が掛かりますから、全速力で駆け抜けていくだけだと思います。
逆に大問1でいえば、問1は漢字ですからおいといて、2から4はすぐ前後に答えがあります。
コルビジェの建物はどんな建物ですか?というのを探せば割と簡単に見つかったり、
問の2から問の4までは聞かれたオーダーに応えようとしたらすぐ答え見つかるんです。
紛らわしい選択肢もないです。
すぐ解けるからそれは見極める必要がないです。
逆に問の5番も、見極めようと考える必要はないです。
頑張って解いたけど選べない、選べないから別の要素を探さなきゃいけないという事で
結果時間が掛かります。
なので、それを見極める見極めないじゃなくて、実際にそうなってしまうという事です。
ただその上で、多分見極めという質問が出てきたのは、時間配分とかが気になるという事がその質問の根本にある気がします。
現代文は45分ぐらい時間掛けられるのかな、というのがあります。
なので、出来れば今回だったら問2から問4で文章を読んで12、3分ぐらいで終わっているといいなと思いますが、結局しかるべき問題を一瞬で解く力がちゃんと付いていたら多分時間をオーバーするのはないと思います。
なので、まずその経験値をちゃんと積んでおく、その上で全速力で駆け抜けて欲しいと思います。
夏井:要は、多分時間が掛かってしかも答えが出ないというのを人はよくハマると言うと思いますが、恐らく受験生の立場からするとハマるのを避けたい気がします。
だからハマるのであれば始めから考えないでおこうというのが一応ベターな解き方とおいている気がします。それでいくとそもそもそんな事が出来る訳ないじゃん、という話になるんですかね?
長島:解いている時にそう思うという事ですから、事前にハマるかどうかの見極めは確かに出来る訳ないと思います。
今、問の5番は答えの要素が二つあるという話をしましたが、現実問題として一要素を選んでどれもこの要素あるじゃん、と思って困るという事があるかと思います。
まさにハマるという状況になったとしたら、ハマった時の対処法は今申した通り、
別の要素を探していくとか、傍線を改めて見比べてあげるとかそういう手法もあります。
ですが、実際にハマってしまったとしたらもうエイヤッと決めて、とりあえず4にしとくかと思って三角でも付けておいて先に進むという事をして頂ければと思います。
時間が余れば戻ってきてもらえればと思います。
夏井:古文だとハマるというイメージはそんなに沸かないです。
ハマるというよりは気が付かぬ間にハマっていてスルーしてしまうみたいな事が多い気がしますが、そういう訳ではないですか?
岡部(古典専門塾かきつばた代表):ごめんなさい、僕古文読める人なので分からないです(笑)
子供たちがハマったという言い方をしますが、
それは解答根拠の箇所がきちんと読み取れていないからなんです。
スピード云々の話で言うならば、きちんと細かく読んで精読していくというか、品詞分解をしなきゃいけないぐらいにきちんと読む箇所と、さっと流していい箇所というのの緩急を付ける事がとても
大事だと思います。
例えば、英語でいえば”This is a pen”を”S” ”V” ”C”とは切らないじゃないですか。
でも、例えば強調構文があるとか、関係代名詞節がごちゃごちゃしているとかというような手間取りそうだなという時は、いちいち「/」入れて読んだりする訳です。
そこの見極め、読んでいてこれはちょっと引っかかっちゃうんじゃないかとか、
あるいは主語を今の段階ではっきりしておかないとあとでややこしくなっちゃうんじゃないかという、ある種勘が効く効かないというのもあると思います。
そこを付けていくというのが長文を読んでいく時の1年間の学習において意識しなきゃいけない所だろうと思います。
もちろん1500字の古文ですから、いちいち全部について熱心に読んでいたら30分掛かっても40分掛かっても読み終わらないんだろうと思います。
それは例えば英語の精読でもそうでしょうが、ある程度難しいものも品詞分解とかしなくてもさらっと読めるように精読的な練習というのが一つにはいるだろうと思います。
ですが、やっぱり試験会場でここはちょっと肝になりそうだという嗅覚を付けろとなります。
そういう所で、マクロにさっと読んでいく所と、ミクロにこだわって読まなきゃいけない所というのの区分けみたいなものを付けられるようにするのが1年間の学習だろうと思います。
夏井:経験を通じてその見極めが段々出来るようになっていく事なんでしょうか?
岡部:そうだと思います。
夏井:多分、今の話は現代文にも似たような話がある可能性があると思っています。
要は、設問を解いている時に、さっきの話ではないですが、やばそうだと分かるのも経験で
分かる部分がひょっとしたらあったりしないのかな?という事を可能性として感じています。
長島:そうですね。現代文でもそういうシチュエーションはあると思います。
一回文章を読んだあとに問題を解きますから、要するにすぐ近くに書いてあったじゃん、って
パッとあそこにあったよねと頭に浮かぶ問題もあります。
でも、全く目星が付かなくなっちゃう問題もある訳です。
なので、解いている時に目星が付くか付かないか、時間が掛かりそうか掛からなさそうかというのはあると思います。
夏井:あるんですが、それはさっきの話で、経験を積む事によってなんとなくやばそうな香りがするなみたいなのがありますか?
長島:それ多分逆だと思います。
多分やばそうな香りは感じないです。感じられないです。
でも、楽勝じゃん、は感じられます。
だから、楽勝じゃん、って感じられない問題が難しい問題になります。
夏井:なるほど。見極め方の一つとしては有効ですよね。
岡部:それは実感と合います。
夏井:見てパッとこれだっていう所の中から意味が分からないものが生まれたという事なので、結局お二人の言っている事は同じだなという結論になりますかね?
岡部:ただ、古文の場合は、例えば「る」とか「れ」とか、あるいは「ぬ」とか決まった引っ掛かりポイントがある訳です。
それが出た時には臭いぞ、と思わないといけないんです。
なので、そこが出た瞬間に品詞分解をする癖が付いていくというのは必要なのかなと思います。
夏井:文章題にアラートが上がっている時があったりするんですね。
岡部:アラートは確実に感じられるはずです。それが精読の練習という事になると思います。
長島:今のアラートというのは現代文で言う所のあれですよね?因果関係の引っ掛けとかあるあるですよね。
今回大問2の問の5番がそうだったと思います。
それが理由じゃないよ、だからその選択肢選べないよ、というものもあったりするので、確かにこれも経験によりますかね。
因果関係がないものをあるように書いちゃっているからダメという選択肢はあるあるです。
そのあるあるも自分で勉強するのはちょっと難しいですかね?
岡部:そうですね。
長島:でも授業であれば多分全講師があるあるとして認識していますから、多分授業では強調するでしょうが、でも解答解説でもそういう話はしてくれています。
改めてここで現代文のあるあるとして引っ掛けの選択肢です。
因果関係がなかった二つを「から」という言葉で結んで、因果関係があるようにしちゃっているという選択肢はありがちな引っ掛けです。
夏井:じゃあアラートとしては古文よりは圧倒的に分かりにくいアラートになりますか?
長島:分かりにくいです。
夏井:だから、さっきの楽勝な問題じゃない問題という方がアラートとしては分かりやすいですか?
長島:でも確かさっき、言っている事結局同じという話でしたが、意外と違う気もします。
現代文だと簡単だからサクッと解ける。アラートと言えばアラートですかね?
岡部:アラートはアラートですかね。
ただ、そこを感じ取れる力というのは、実をいうと極めて言語化しづらい部分ではある訳です。
中々そこの所はやっぱり独学しづらい部分というのはあるのかなと思います。
ですので、それは多分学校なり塾の先生がクドく言っている所というのは自分で解き直す訳です。
解き直すというのは結局授業での回答のプロセスみたいなものを体現する、あるいは追体験すると言ってもいいと思います。
その際に講師側が非常にクドく言っていた所であるとか、もの凄い強調して言っていた所をちゃんと思い出してそこに意識を向けて解くという練習をしていくという事が大事かなと思います。
多分受講している側としては、何で強調しているのかとかあんまりよく分かってないと思います。
ですが、強調しているからには何らかの意図をもってやっているので、何か強調していたからそこの解き方、そこの品詞分解というのは凄く重要なんだ、と意識してやってみるという事が大事かと思います。
そうしていく中で、二度三度そうした事をやっていく事で、あ、これこの間強調していたあれじゃない?という事が思い出されるんじゃないかと思います。
それを繰り返していく中で身体化する事が出来ると思いますので、中々それこそまさに言語化してこういうティップスがあります、みたいに言いづらい所ではあります。
これは言語表現なのである程度仕方がないです。
ですが、強調されている箇所、ここに注目しろと言われている箇所については追体験としてここを注意して読まなきゃいけないんだという意識をもって、意識化して練習していくという事が大事かなと思います。
長島:先生がおっしゃった身体化は、考える前に分かっているという状態を作れという事ですよね?
岡部:そうですね。
例えば、簡単な話で言うと、「る」とか「れ」とかの識別というのは、僕はいちいち品詞分解しない訳です。
「何とかある」ときていたら受け身・自発・可能・尊敬に決まっているし、「何とかれる」と言ったら完了に決まっているので、別にそんな事を考えないです。
いちいちそれが意識化されてない訳です。
体の中で「れる」を見た瞬間に、「ている」「何々した」と訳している訳です。
こんな事をいちいち、え段言で以前系にくっついている「る」だから完了の「り」の連帯系だとかという事を意識化している時間はない訳です。
最初のうちはもちろん意識化して、言語化してやんなきゃいけないですが、繰り返していく中でそれが無意識化して直読直解出来るようになっていきます。
それこそ”This is a pen”をいちいち”S” ”V” ”C”なんて切らないだろ、という例を出したのはまさにそれで、それはもう”This is a pen”でそもそも訳すらしないで理解している訳です。
さらっと読めるようにする。
マクロに読む、ミクロに読むという話ですが、マクロに読む事の箇所が広がれば広がるだけ読むスピードが上がる訳です。
高校生、大学受験生が共テ終わらないよ、とかって言いますが、終わらない事はないんです。
僕ら予備校の先生というのは、あの問題を半分の時間で解いている訳です。
それは、僕らがそれを無意識化して、その作業を無意識的に作動させているから出来ている訳です。
もちろん40分で解けとは言いませんが、でも早いお子さんはそれぐらいで解いていますよね?
長島:現代文早い人は大問1、2で30分ぐらいで解く受験生はいます。
岡部:実際、僕受験生の時国語は40分で解いていましたから、そこら辺の練習というのが必要なんだろうなという気はします。
長島:だから今年の現代文で言えば、例えば大問2の問6番の空欄2、やきびるは空欄2と捉える事が
出来るとなったら、それは無意識にやきびるを探しにいくだろうという話です。
そこで止まらないでくれよ、という事ですよね。
岡部:そうですね。
長島:ついでに今の問題で言うと、その手前に本文の最後の一文に注目して、と書いてあるので、最後の一文のやきびるが何かと探す訳です。
こんなのは考えないでパッと動いてくれよ、という事ですよね?そのツボは現代文も全く一緒です。