主張文・小論文の書き方入門──複数の意見を読んで自分の考えをまとめるコツ
今回は、小論文の書き方について解説します。ここで紹介する方法は、慶應大学・AO入試・医学部入試・看護系入試など、さまざまな入試形式に対応できる、汎用性の高い小論文の書き方です。
「小論文はセンスが必要」「何から書けばいいか分からない」と感じている方でも、書き方のマニュアルさえ身につければ、誰でも論理的な文章が書けるようになります。
普遍的な小論文の書き方マニュアルとは
小論文の勉強は、他教科に比べてそこまで大変ではありません。
夏頃から、他教科の息抜き程度に取り組んでおくだけでも、ほかの受験生に大きく差をつけることができます。
「直前期になってから焦って始める」のではなく、
夏くらいからコツコツと「書き方の型」を身につけておくことがベストです。
小論文が「そこまで大変ではない」と言える理由は、書き方のマニュアルさえ身につければ、毎回同じ型で書けるようになるからです。
小論文の基本構造:4ステップの型
今回紹介するマニュアルは、次の4ステップで構成されます。
「論点 → 譲歩 → 論破 → 結論」の流れでまとめる
- 論点:「イエス・ノー」で答えられるテーマを提示する部分
- 譲歩:自分と反対側の意見(反対意見)をいったん認め、整理して提示する部分
- 論破:譲歩で示した反対意見に反論し、自分の立場のほうが妥当であることを示す部分
- 結論:最終的な自分の主張を、簡潔にまとめる部分
そもそも、小論文は「論点のある文章」=論文の一種です。
そのため、まず論点(イエス・ノーで答えられる問い)をはっきりさせることが出発点になります。
ステップ別解説:論点・譲歩・論破・結論
ステップ1:論点を提示する(論点)
論点とは、「イエス・ノーで答えられるテーマ」です。
小論文も論文の一種である以上、論点がなければ小論文とは言えません。そのため、冒頭で論点を明示し、
- 自分が何について論じようとしているのか
- どの視点から話を進めるのか
を、採点者にはっきりと示す必要があります。
論点は、次のような形でつくると分かりやすくなります。
- 「◯◯という考え方は正しいのか」
- 「課題文の主張『〜〜』は妥当と言えるのか」
課題文付き小論文の場合も、
「課題文では〜と主張されている。その主張は正しいのか」
という形で論点を立てると、スムーズに書き始めることができます。
ステップ2:反対意見を認める(譲歩)
次のステップが譲歩です。ここでは、
- 自分が「イエス」の立場なら、「ノー」の立場の意見を
- 自分が「ノー」の立場なら、「イエス」の立場の意見を
いったん認めて整理して書きます。
いきなり自分の意見から入るのではなく、一度相手側に譲る=譲歩することで、
その後の自分の主張がより説得的に見えるようになります。
譲歩の役割は主に二つです。
- 対立する意見を理解したうえで自分の意見を述べていることを示し、視野の広さをアピールできる
- あとで論破(反論)するための土台をつくる
「自分と違う立場の人は、なぜそう考えるのか?」を筋道立てて書くのがポイントです。
ステップ3:反対意見に反論する(論破)
譲歩で反対意見を取り上げたら、次はそれを論破(反論)します。
ここでは、
- 譲歩で挙げた意見がなぜ不十分なのか・どこに問題があるのか
- それに対して、自分の立場がなぜより妥当・有効なのか
を具体的な理由を挙げて説明していきます。
この「譲歩 → 論破」の流れが、
小論文全体の説得力を大きく左右する重要な部分です。
ステップ4:最終的な主張をまとめる(結論)
最後に、これまでの流れを踏まえて、自分の意見を結論として簡潔にまとめます。
- 最初に提示した「論点」に対して、最終的にイエスなのか・ノーなのかを明示する
- 本文で述べてきた論破の内容と矛盾しないように、スッキリとした一文に落とし込む
このとき、新しい情報をいきなり持ち込まないことが重要です。
あくまでも、これまでの議論を要約して「だから私は〜と考える」とまとめる形にしましょう。
具体例で見る:4ステップ小論文の組み立て方
例題
例題
大学において、すべてを英語で行う講義が増えてきている。
その風潮に対するあなたの考えを600字以内でまとめなさい。
この例題を使って、「論点 → 譲歩 → 論破 → 結論」の流れで答案を組み立ててみましょう。
ステップ1:論点を立てる
まずは論点をはっきりさせます。ここでは、
- 「授業のすべてを英語で行うという風潮は正しいのか」
という形にすれば十分です。
課題文付きの場合には、
- 「課題文では『〜〜』と主張されていた。その主張は正しいのか」
という形で論点を作ると、どんなテーマにも応用しやすくなります。
ステップ2:英語化を支持する立場を整理する(譲歩)
次は譲歩です。ここでは、世間の流れに反対の立場をとってみましょう。
つまり、自分は「すべての授業を英語で行うのは好ましくない」と考える立場に立ちます。
そのうえで、譲歩ではあえて、
- 「すべての授業を英語で行うのは正しい」
という意見を整理して書いていきます。
たとえば、
- 現代はグローバル化が進んでおり、世界共通語である英語が必須になっている
- すべての授業を英語で行えば、学生の英語力は自然と高まる
- そのため、「授業は英語で行うべきだ」という風潮は一見もっともらしく見える
といった内容をまとめれば、譲歩の段落が完成します。
ステップ3:英語偏重を批判する(論破)
続いて論破です。
譲歩で示した「授業の英語化は正しい」という意見に対し、どこに問題があるのかを指摘していきます。
たとえば、次のように考えられます。
- グローバル化の時代に必要なのは、英語力だけではない
- 英語が流暢でも、教養や専門知識、実力が不足していれば通用しない
- むしろグローバル化したからこそ、自国の文化や歴史を含む教養・実力を深める必要が高まっている
- 高度な内容を学ぶ際には、英語よりも母語(日本語)で教育を受けるほうが理解が深まりやすい
このような理由を示すことで、
「英語で授業を行うこと」よりも「日本語でしっかりと教養・知識・実力を養うこと」のほうが、長期的に見て有意義である
という論破につなげることができます。
ステップ4:自分の立場を簡潔に示す(結論)
最後に、ここまでの議論を踏まえて、結論として次のようにまとめます。
- 「授業のすべてを英語で行うのはよいことであるという風潮はおかしいと思う」
この一文で、論点「英語化の風潮は正しいのか」に対する自分の答えを、はっきり示すことができます。
小論文を効率よく上達させるためのポイント
マニュアルに沿って、まずは数問書いてみる
いかがでしょうか。
ここまでのようなマニュアルに基づけば、比較的簡単に論理的で説得力のある文章が書けるようになります。
- 夏の間に、今回のマニュアルに従って最低4問程度は小論文の問題を解いてみる
- 毎回必ず、論点 → 譲歩 → 論破 → 結論の順で構成してみる
このようにして、土台となる「型」をしっかり固めておくことが大切です。
必ず第三者に添削してもらう
また、小論文は自分では気づきにくいクセや論理の穴が多い科目です。
そのため、解いたら必ず、信頼できる先生に見てもらうことをおすすめします。
- 譲歩の内容が表面的になっていないか
- 論破の部分で、きちんと反対意見を打ち消せているか
- 結論が、論点と論破の内容ときちんと対応しているか
こうした点を客観的にチェックしてもらうことで、短期間でも大きくレベルアップできます。
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まとめ:小論文は「型」を身につければ怖くない
- 小論文は、「論点のある文章」=論文の一種であり、イエス・ノーで答えられる論点を必ず立てる。
- 書き方のマニュアルは、「論点 → 譲歩 → 論破 → 結論」という4ステップ。
- まずは論点をはっきりさせ、反対意見をいったん認める(譲歩)。
- そのうえで、反対意見の弱点を指摘し、自分の立場の妥当性を示す(論破)。
- 最後に、これまでの議論を一文でまとめた結論を述べる。
- 夏頃から、他教科の息抜きとしてでも構わないので、小論文に触れ始めるのが理想。
- 最低でも数問はこのマニュアルに沿って書き、信頼できる先生に添削してもらうことが重要。
- 添削環境がなければ、読解ラボ東京の個別指導・オンライン授業の活用も有効。
小論文は、特別な「文才」がないと書けないものではありません。
普遍的な「型」と、それを使いこなすための練習さえ積めば、誰でも論理的で説得力のある文章を書けるようになります。
入試本番で自信を持って答案を書けるよう、ぜひ早めに準備を始めていきましょう。



