中学受験で国語が苦手な子へ──「読めない・解けない」の原因と克服ステップ
「国語が苦手すぎて、本当にどうしていいかわからない……」。
中学受験・高校受験を控えるご家庭で、最もよく聞かれるお悩みの一つです。
本ページでは、国語専門塾としての視点から、「国語を無理に得意科目にしようとしない」という現実的な戦略と、日々の学習でできる具体的な対処法を整理してお伝えします。
「国語が苦手だからといって、放置しておくわけにはいきません。
ただ、無理やり『得意科目』にしなくても、受験には十分に間に合います。」
国語が苦手な受験生への基本戦略
「国語を無理に得意科目にしなくていい」という発想
受験の最終目的は、志望校に合格することです。
すべての科目を満遍なく得意にすることが目的ではありません。
- 国語を合格最低点 −10点くらいでまとめる
- その分を算数や他教科でカバーする
このように、「国語は大きく崩さない」「他教科で上乗せする」という戦略も、十分に成立します。
大切なのは、
- 国語を捨てるのではなく、失点を最小限に抑える力をつけること
- 「全部を国語で取り返そう」と考えて、無理な期待やプレッシャーをかけすぎないこと
現実的なラインを見据えたうえで、「最低限ここまでは取る」「その上は他教科でカバー」という発想に切り替えるだけで、戦略は大きく変わります。
低学年・基礎段階での向き合い方
「基本的に、勉強は出来るから楽しいと思います。
苦手と言っていても、丸をもらえたらやっぱり嬉しいはずです。」
3・4年生など、いわゆる「低学年帯」のうちは、前向きな成功体験を積ませることが何より大切です。
- お子さまにフィットしたレベルの教材をチョイスする
- きちんと丸をもらえる設問から練習して、「やればできる」という感覚を育てる
- 国語専門塾などで、その子に合う問題・分量をプロに選定してもらうのも有効
無理に難しい文章を読ませて「やっぱり国語は嫌い」となってしまうよりも、
「できた!」を積み重ねて、国語への拒否反応を小さくしておくことが、低学年期の重要な目的です。
一般的な対処法の見直し
読書量と国語の点数は、意外と相関が薄い
「国語が苦手なら、とにかく本を読め」というアプローチは、よく耳にします。
しかし、読書量=国語の点数とは言い切れません。
「私たちの読書では、理解が及ばないところは読み飛ばしています。
納得できるところだけ拾って、『この筆者には賛成できないな』などと考えながら読んでいる。
入試国語は、まさにその『普段読み飛ばしているところ』に棒線を引き、解釈を聞いてきます。」
この構造からも、
- 趣味としての読書は大歓迎
- しかし受験対策としては「読書量」より「問題演習」の方がはるかに重要
と言えます。
もちろん、読書を重ねることで「読み飛ばす幅」が少しずつ狭まる効果はありますが、テストで点数を上げる」という意味では、効果は限定的です。
結論:国語の点数を上げたいなら、読書よりも「国語の問題をたくさん解く」ほうが対策として有効です。
「漢字だけやる」は前提としては正しいが、それだけでは足りない
「文章が読めないから、とりあえず漢字だけやる」というアプローチも、よくあります。
- 漢字は最低限の得点源になる(例:100点中10点が漢字)
- 合格ラインが60点前後だとすると、その10点は60点のうちの約1/6を占める大きな得点源
その意味で、漢字の学習は前提として非常に大切です。ただし、
- 漢字だけで読解問題が解けるようになるわけではない
- 読解もやれば伸びるし、「棒線を説明しろと言われたら言い換えを探す」「気持ちを考えるときは棒線の理由を探す」など、方法論が存在する
- その方法論を「使いこなす訓練」をすることで、初めて読解力として定着する
「理屈を知るだけではダメで、それを使いこなす訓練が必要です。
量が必要なのにその量をやっていなくて、『もうダメだ』と決めてしまうケースも多いと感じます。」
漢字はやる・読解もやる・そして「量」をこなす。
この三つをそろえて初めて、「国語はどうせ伸びない」という思い込みから抜け出せます。
語彙力との付き合い方
「まず語彙力を増やさないと……」と心配される保護者の方も多いですが、語彙については冷静に整理しておく必要があります。
漢字が分かれば、語彙はかなりカバーできる
語彙力の土台は、やはり漢字です。
- 漢字自体がどんな意味を持つか理解しておく
- 初めて見る熟語でも、構成する漢字の意味を手がかりに意味を推測できる
このように、漢字の学習にきちんと取り組むことで、語彙力のかなりの部分をカバーすることができます。
「気持ち言葉」は授業の中で定着させる
「気持ちを表す言葉を徹底して覚えさせなきゃ」と考えるケースもありますが、実際には、
- 「うれしい」「恥ずかしい」などは、12年も生きていれば自然と知っている言葉が7~8割
- 残りの2~3割の、やや特殊な言葉(例:「後ろめたい」など)は、授業の中で繰り返し扱う定番ワード
授業現場では、子どもたちが「後ろめたい」をやたらと使ってみたくなるほど、
こうした「耳慣れないけれど頻出の気持ち言葉」は、自然と繰り返し練習することになります。
そのため、殊更に「気持ち言葉」を意識して覚え込ませる必要は薄いと考えています。
それよりも、
- 漢字の意味と熟語の理解
- 設問に対する解き方のアプローチ
をしっかり身につけることに、時間とエネルギーを使う方が効率的です。
国語を苦手にしないための具体的な学習法
ここからは、国語を「苦手」と感じないための、より実践的な学習方法を整理していきます。
① 会話を増やす:話す力=国語力の土台
身近な大人、特に親御さんとの会話を増やすことで、自分の気持ち・考えを伝える力や語彙力を日常的に養えます。
- 日常の出来事について、できるだけ具体的な言葉で話す
- 「なぜそう思ったの?」「どうしてそう感じたの?」と問いかけて、順序立てて話す練習をする
会話の中で、さまざまな言葉を覚え、正しく使い、順序立てて話すことで、
自然と「会話力=国語力の土台」が鍛えられていきます。
② 読む習慣をつくる:短時間&短い文章から
国語の苦手克服には、やはり文章に触れる時間が必要です。とはいえ、
- もともと読書が苦手
- 本を読みたがらない
というケースが多いのも事実です。
- 短時間で読める文章(短編・コラム・教材の短い文章など)から始める
- いきなり厚い本を渡すのではなく、活字に触れるハードルを低くしておく
- 親の読み聞かせはとても有効。本人が興味を持った本を一緒に楽しむことがポイント
読み聞かせの際には、
- 親がその本に興味を持ち、登場人物や内容についていくつか質問する
- それに答える中で、自然と会話力+読解力が育っていく
③ 文章をイメージする:音読+絵にする
国語が苦手な子には、「文字は追えているけれど、内容が頭に入っていない」というケースがよくあります。
- 黙読ではなく、まずは音読をする
- 目だけでなく耳からも情報を入れて、視覚+聴覚の両方で内容を捉える
- 読んだ内容を、実際に絵に描いてみる(情景・人物の表情など)
最初は絵にしないとイメージしづらくても、
慣れてくると、絵を描かなくても頭の中で情景が浮かぶようになっていきます。
文章をイメージする力を養うことが、読解力のベースになります。
④ 漢字・語彙をコツコツ積み上げる
分からない漢字が多いと、それだけで「内容が理解できない」と感じてしまい、
国語=苦手教科という印象が固定されてしまいます。
- 分からない漢字が出たら、まず前後の文脈から意味を推測してみる
- そのうえで、辞書や解説で答え合わせをして、正しい意味を覚える
- 漢字はコツコツと繰り返し学習し、定着させる
漢字は中学受験だけでなく、高校受験・大学受験でも必要になる、もっとも息の長い知識です。
漢字が分かり、その漢字を含む熟語の意味も分かるようになると、
- 語彙力が増える
- 文章が読みやすくなる
- 結果として読解力が高まる
語彙力が増えると文章が読みやすくなり、読解力を高めることができるので、そのための第一歩として漢字の学習を日々行うことがとても大切です。
⑤ 解き方(答え方)の型をマスターする
国語の問題は、「何を聞かれているか」によって、答え方の型がかなり決まっています。
- 「どういうことですか。」→「〜ということ。」
- 「理由を述べなさい。」→「〜から。」
- 字数指定・字数制限・抜き出しなど、提示された条件を厳守する
これらの「文末の型」「条件の守り方」を意識するだけで、
設問に対する答え方が整い、得点アップにつながるケースが少なくありません。
まずは、設問で問われている内容と、答え方の型を丁寧にそろえることを意識してみてください。
⑥ 本文の内容を答える&根拠を言えるようにする
「あなたの意見を述べなさい。」と明示されていない限り、
国語の問題は、本文に書かれている内容を答えます。
- 読み手がその文章を読んで「どう感じたか」は、基本的に採点には関係がない
- 記述でも選択でも、常に「本文のどこを根拠にしたのか」を言えるようにする
本文の内容に沿った答えを書き、根拠も提示できるようになると、国語の苦手はかなり克服できたといえます。
⑦ 記述はとにかく何か書く:部分点を取りにいく
国語が苦手な子に多いのが、記述問題を白紙のまま出してしまうことです。
- 記述問題には部分点がある
- 本文の内容を意識し、解き方の型に沿って書けば、何も書かないより確実に点が入る
「とにかく何か書く・空欄を作らない」という意識を持つことが、国語の点数を底上げするうえで非常に重要です。
読解力・記述力を伸ばすために
読解力・記述力は、一夜漬けで身につくものではありません。
繰り返し・毎日の習慣の中で、少しずつ積み上がっていく力です。
- 日々の会話で、考えを言葉にする練習をする
- 短い文章からでよいので、活字に触れる習慣をつくる
- 漢字・語彙・解き方の型を、少しずつ・何度も練習する
- 問題演習を通じて、「やり方を知っている」状態から「使いこなせる」状態へ
この積み重ねを続けていけば、理系・文系を問わず、
国語を「苦手」と感じることは少なくなっていきます。
中学受験・高校受験・大学受験、どの段階でも同じことが言えます。
自宅で行っていただきたいことと並行して、当塾では、
- たくさんの問題を解きながら、正しい方法論を習得する「読解演習道場」
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まとめ:国語が苦手な子への現実的なロードマップ
- 目的は「志望校合格」であり、国語を無理に得意科目にしなくてもよい
- 国語は合格最低点 −10点程度を目標にし、その分を他教科でカバーする戦略も立派な選択肢
- 低学年のうちは、「できる」→「楽しい」→「前向きに取り組める」という流れを作るのが最優先
- 読書量とテストの点は別物。読書より「問題演習」と「解き方の訓練」を重視する
- 漢字は前提となる重要な得点源。ただし漢字だけではなく、読解と方法論もセットで鍛える
- 語彙は漢字+熟語の理解でかなりカバー可能。気持ち言葉は授業の中で定番ワードとして定着させる
- 会話・音読・イメージ・漢字・解き方の型・根拠を意識した回答・記述で「何か書く」ことを習慣にする
- 読解力・記述力は、毎日の小さな積み重ねと問題演習の量で着実に育つ
「国語が苦手だから無理」と決めつけてしまう前に、
ここで紹介した現実的な戦略と具体的な学習法を、ぜひ一つずつ試してみてください。



