中学受験国語「長文で時間が足りない」原因と対処法──読み方・設問の粘り方・時間配分を総整理
中学受験の国語でよく耳にするお悩みが、「文章はそれなりに読めているはずなのに、いつも時間が足りない」「最後までたどり着けずに点数を落としてしまう」といったものです。ここでは、読解ラボ東京の指導現場で蓄積してきた知見をもとに、長文読解で「時間が足りない」問題が起こる原因と、その具体的な対処法を整理してお伝えします。
記事後半では、日々の家庭学習で実践できるトレーニング方法や、試験本番での時間配分の考え方も解説します。お子さまの読解力だけでなく、「時間を味方につけて解ききる力」を身につけるためのヒントとしてご活用ください。
代表インタビュー(動画)
まずは、読解ラボ東京の代表インタビュー動画で、「時間が足りない」問題に対する考え方をざっくりつかんでいただけます。
中学受験国語「時間が足りない」問題とは?
「文章に納得しないと先に進めない」タイプの子どもたち
長文読解で時間が足りなくなる背景には、単に「読むのが遅い」「解くのが遅い」というだけでなく、次のような性格・読み方のクセが関わっていることが少なくありません。
- 文章に納得しないと先に進めないタイプの生徒が一定数いる
- 「ちゃんと理解してからでないと次に進みたくない」という気持ちが強い
- 結果として、同じ箇所を何度も読み直してしまい時間が足りなくなる
この「丁寧さ」は本来とても大切な資質ですが、入試本番の制限時間内で得点を取りきるという観点から見ると、次のような発想の転換が必要になります。
「よほど重要な部分でなければ二度読みはしないようにしよう」「まずは立ち止まらずに最後まで読み切ることを優先しよう」
読んでいる途中では完全に理解できていなくても構いません。読み終えて設問に取り組む段階で理解が深まることはよくあります。まずは、途中で止まりすぎない読み方を意識させることが、「時間が足りない」問題の第一歩の対処です。
「設問で粘りすぎる」と、いつの間にか5分消える
もう一つ大きな原因が、設問に対して必要以上に粘りすぎてしまうケースです。特に抜き出し問題などで、次のようなことが起こりがちです。
- 抜き出しの場所を見つけようとして、同じ段落を行ったり来たりしてしまう
- 「ここじゃない気がする」と悩み続けて、気づいたら5分経っていた
このような状況に対しては、次のような「切り替えの目安」を持たせることが有効です。
- 選択問題なら、10秒考えて答えの目星もつかない場合はいったん選んで先に進む
- 飛ばした問題には印(★など)をつけて、残り時間で戻る
- 抜き出し問題でも、分からなければ一度飛ばし、最後にまとめて探す
「分かるまで考え続ける」を美徳にしすぎず、点数を最大化するための優先順位を意識させることが大切です。
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「ゆっくり=正確」とは限らない理由
本当に「ゆっくりのほうが正確」なのか?
保護者の方やお子さん自身から、次のような言葉を聞くことがあります。
「うちの子はゆっくりだけど、やっている範囲は正確だと思うんです」
しかし、指導者の立場から見ると、これは実はごく少数派です。
- 「速いけれど雑」というタイプや
- 「ゆっくりだけれど、その分だけ正確」というタイプは、全体の一割未満のイメージ
多くの場合は、次のどちらかに当てはまります。
- 速くて正確な子(定番のアプローチが即座に浮かぶ)
- ゆっくりで、まだまだ伸びしろがある子
この差を生むのが、「定番アプローチ」を瞬時に思い出せるかどうかです。つまり、スピードと正確性は本来、表裏一体なのです。
定番アプローチが「速さ」と「正確さ」を同時に高める
国語の問題にも、算数同様に「定番の考え方」「よく使う読み方」が存在します。たとえば、次のような例です。
「僕は【 】が好きだ」という文を見たら、
- 「【 】は僕が好きなもの」だとすぐに言い換える
- そのうえで、「では、僕が好きなものは何か?」と本文から探す
このような型(パターン)をいくつも頭にストックしておくことで、
- 答え方の見通しが早く立つ
- 無駄に悩む時間が減り、スピードが上がる
- 根拠をもとに答えを選べるので、正確さも上がる
ただし、知識として聞いただけでは使いこなせません。必ず問題演習を通じて、定番アプローチが「スパッ」と頭に浮かぶ状態になるまで繰り返すことが必要です。
文章を速く・正確に読むための工夫
極端な「二度読みぐせ」がなければ、多少の遅さは問題ない
文章を読むスピードについては、極端に何度も同じ箇所を読み返すのでなければ、大きな問題にはなりにくいと考えています。
一方で、「もう一段スピードが上がれば、設問にかけられる時間が増えるのに…」というケースもあります。その場合は、次のようなトレーニングが効果的です。
大人とタイムトライアルをしてみる
家庭で実践しやすい方法として、保護者の方と一緒に同じ文章を読み、時間を計るというやり方があります。
- 保護者が普段どおりのペースで本文を読む
- お子さんも同じ文章を読み、かかった時間を計測する
- たとえば保護者より3分多く時間がかかったなら、「あと3分速く読めると理想的だね」と具体的な目標にする
このように、具体的な差分としてスピード目標を共有することで、子ども自身も「どれくらい速くなればよいか」をイメージしやすくなります。
知らない言葉で止まりすぎない工夫
文章を読んでいるとき、
- 知らない言葉が出てきた瞬間にピタッと止まってしまう
という子もいます。この場合、次のような習慣を身につけさせることが大切です。
- 使われている漢字から意味を予想する
- 前後の文脈から「多分こういう意味だろう」と考える
もちろん、あとから辞書などで調べることも大切ですが、試験中に毎回調べている時間はありません。文脈から大枠をつかむ習慣がついていれば、自然と語彙力も育っていきますし、知らない言葉が出てきても読みが止まりにくくなります。
問題を解く時間を短縮するコツ
「10秒考えて分からなければ飛ばす」をルール化する
設問に時間をかけすぎないためには、次のようなルールを決めておくと効果的です。
- 選択問題:10秒考えても候補が絞れないなら、仮の答えを選んで次へ進む
- 抜き出し問題:どうしても見つからなければ、一旦飛ばして残り時間で戻る
- 飛ばした問題には★などの印を付け、最後に必ずチェックする
大切なのは、「分かる問題で確実に得点する」ことを優先する姿勢です。1問に固執して他の問題にたどり着けないのは、入試では大きなロスになります。
定番アプローチを「使えるレベル」まで練習する
すでに触れたように、
- 定番のアプローチを知る
- 問題演習を通じて、瞬時に使えるレベルにまで磨く
この二つが揃ってはじめて、スピードと正確性が同時に高まります。
定番アプローチの例:
- 主語・述語を押さえてから、誰が何をどうした話かを整理する
- 「しかし」「ところが」などの逆接後に、筆者の主張や大事な内容が来ると意識する
- 心情語の前後で、出来事と気持ちの変化をセットで追う
これらを「知っている」で終わらせず、演習のなかでパッと出てくる状態になるまで繰り返すことが、最終的には時間短縮にも直結します。
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試験本番での時間配分の考え方
算数と国語では「見直し」の性質が違う
算数では、「途中計算の確認」「別解との照合」など、どうしても見直しに時間が必要な科目です。そのため、
- 制限時間50分のテストなら、1周目は35分(全体の約70%)を目安に解き終える
- 残り15分で見直しや、飛ばした問題の再チャレンジをする
といった時間配分の指導がよく行われます。
一方、国語では、算数ほど「計算の見直し」に時間をかける必要はありません。見直し時間はあるに越したことはありませんが、算数ほど「二周目前提」で時間を割く必要はないというイメージです。
国語で意識したい「大問ごとの時間配分」
国語の場合は、次のような考え方をベースにすると良いでしょう。
- たとえば「大問1:物語文」「大問2:説明文」という構成なら
- 物語文のほうが文章量が多く時間もかかりやすい
- 演習を通して、物語文に30分、説明文に20分程度など、自分なりの目安をつかむ
試験中は、その目安と時計を照らし合わせながら、
- 「そろそろ30分になるから、物語文を切り上げて次に進もう」
- 「まだ余裕があるから、この設問にもう少し時間をかけても大丈夫そうだ」
といった判断をしていきます。日々の演習で「自分のペース」を数値として把握しておくことが、時間配分の精度を上げる近道です。
日々の学習でできる「時間が足りない」対策
対策1:普段から時間を計りながら解く
入試本番と同じように、普段から時間を計って問題を解くことを習慣化しましょう。これにより、
- 自分が文章を読むスピード
- 設問ごとにかかる時間の感覚
を、「身体で」理解できるようになります。
時間を気にせずじっくり解いたときと、制限時間を設けて解いたときでは、ほとんどの場合、得点は変わります。時間を意識すると、
- 焦りからケアレスミスが増える
- 自分の読書スピードを把握できず、最後の問題までたどり着かない
といったことが起こりやすくなります。だからこそ、普段の学習から「時間と付き合う練習」をしておくことが重要なのです。
対策2:読むスピードを意識し、音読を活用する
そもそも、文章を読むスピードが極端に遅いと、設問にかけられる時間が不足します。ただし、むやみにスピードだけを上げるのは危険です。
- 「自分が理解できる範囲」でスピードを上げていくことが大事
家庭学習の場面では、次のような工夫が有効です。
- 黙読ではなく、音読を取り入れる
- 耳や口も使い、五感を多く使って読むことで、内容が整理されやすくなる
- ただし、「主人公になりきって演じる」読み方よりも、客観的に内容を追う音読を意識する
- なるべくテンポよく音読し、その延長として黙読のスピードも上げていく
音読に慣れてスピードが上がってくると、黙読の際にも「文字を目で追って理解する速さ」が自然と向上していきます。さまざまなジャンルの文章で、日々コツコツ訓練していくのが理想です。
対策3:設問を先に読む方法は「合う子だけ」に
「本文を読む前に設問を読んでおく」という解き方も、時間短縮の方法としてよく紹介されます。この方法には次のようなメリットがあります。
- 設問を先に読んでおくことで、本文を読むときに「何に注目すべきか」が分かる
- 本文を読みながら答えの手がかりを意識できるので、設問の意味を理解する時間を短縮できる
- 段落分けや抜き出し問題などでは、該当箇所を探し直す手間が減る
一方で、この方法には次のようなリスクもあります。
- 設問を先に読んだものの、本文を読んでいるうちに設問内容を忘れる
- 答えを探すことに意識が行きすぎて、文章全体の流れをつかめなくなる
- 結果として、文章全体の内容理解が浅くなってしまう
そのため、この方法を使うかどうかは、
- 設問を把握しながら、文章理解と答え探しを同時進行できるかどうか
を基準に判断する必要があります。
まとめると、
- うまく使いこなせる子にとっては、大きな時間短縮につながる有効な方法
- 難しいと感じる子が無理に取り入れると、かえって時間のロスや理解不足を招きやすい
- 最終的には、自分に合った解き方を見つけることが何より大切
まとめ:時間を味方につける長文読解のポイント
中学受験の長文読解では、短時間でサッと理解できるような簡単な問題ばかりが出題されるわけではありません。そのなかで「時間が足りない」状況を防ぐには、次のようなポイントを押さえておくことが重要です。
- 途中で立ち止まりすぎない読み方を身につける
┗ 「よほど重要な箇所以外は二度読みしない」「まず最後まで読み切る」意識を持つ。 - 設問に粘りすぎないルールを決める
┗ 10秒考えて分からなければ一旦飛ばし、★印を付けて後から戻る。 - 定番アプローチを知り、演習で「瞬時に使える」まで磨く
┗ スピードと正確さは表裏一体。型が身についているほど、速く・正確に解ける。 - 普段から時間を計り、自分のペースを数値として把握する
┗ 本番と同じように制限時間を設けて演習し、「どの大問に何分かけるか」の感覚を養う。 - 音読を活用して読むスピードと理解力を同時に鍛える
┗ 主観的に演じすぎず、テンポよく客観的に内容を追う音読を習慣化する。 - 設問先読みは「自分に合うかどうか」を見極めて使う
┗ 合う子には有効な時短手法だが、無理に取り入れると逆効果になることも。
これらを日々の学習のなかで少しずつ実践していくことで、
- 読み終わる前に時間が来てしまう
- 解き切る前に終了時間になってしまう
という状況は確実に減っていきます。「読める力」と「時間内に解き切る力」はセットで育てていくものです。ご家庭での学習や、塾・個別指導の中でも、ぜひ意識して取り組んでみてください。



