■大学入試共通テストの大まかな傾向を把握しよう!【大学入試共通テスト(国語)考察①】

夏井(中学受験専門夏井算数塾代表):では、宜しくお願いします。
という訳で、今回は大学入試共通テストです。過去3回実施されたテストで多少データもたまってきたところで、どのようなテストなのか、そしてどう向き合えばよいのかについてお話ししたいと思います。
夏井:まずは現代文から、長島先生お願いします。

長島:去年と同様、2023年も大問1で文章が二つ出てきました。これも昨年に続く傾向で、2年前までは大問2の問1で言葉の意味を問う問題が出ていましたが、昨年からその設問がなくなり、今年も同様でした。つまり、昨年の内容を踏襲していたというのが第一印象です。2年連続ですから、この傾向は今後も続くのではないかと見ています。
出題としては、大問1・大問2に時間がかかる問題が含まれている一方で、「これは一瞬で解ける」タイプの問題もあります。結論としては、まずその「一瞬で解ける問題」を確実に取り切れるかが勝負です。時間がかかる問題はある程度やむなしなので、そこに時間を回すためにも、サクサク解ける設問は迷わず処理してほしい――その力が必要だと考えています。

夏井:続いて、古文・漢文について岡部先生お願いします。

岡部(古典専門塾かきつばた代表):古文漢文は、共通テストになってからの大きな違いとして複数資料を扱う点があります。もう一点、古文の文法問題が変化しました。以前は「ぬ/ね」など同一事項の識別を複数箇所で問う形式が多く、敬語も含めテーマは基本1個でした。ところが現在は、傍線部ごとに全く異なる文法事項を扱い、その説明が正しいかどうかを判定させる形式に変わっています。
つまり、文法事項を万遍なく問う形にシフトしました。さらに本文理解がないと正誤判断が難しい選択肢も含まれているため、文法問題の難度は上がっている印象です。文法は幅広く、手を抜かずに学ぶ必要があります。
前評判では「いわゆる文法問題の比重が下がるのでは」と言われていましたが、実際はその逆で、文法全体を広く知っていなければならない傾向が明確です。
複数資料の処理については、長文が一つでも和歌が多数並ぶケースがあり(私大では今年の早稲田・商学部が典型)、和歌の応酬だけでストーリーが進む難問も出ています。受験生は和歌を「なかったこと」にしがちですが、和歌も言語表現であり、しかも物語中での和歌は感動の頂点で示されることが多い。そこを読めないなら文章全体も読めないと言ってよいでしょう。ここ数年は和歌学習の比重を確実に高める必要があります(共テに限らず私大・国公立でも同様)。
また複数資料については、同一テーマを異なる出典で扱う場合が典型です。どこが共通で、どこが異なるか(アプローチや感想の違い)を対比しながら読むことが重要で、A・B両文の対応箇所を意識して突き合わせて読む必要があります。読解は、先に読んだ文章をワーキングメモリで参照しつつ進める読み方が求められる――英語を含む近年の大学入試全体の「複数資料処理」傾向に古文も合致していると感じます。

夏井:複数資料は現代文・古文に限らず増えている印象です。片方の内容を頭に置きながら他方を読み、対比していく――通常の単文より労力は増える気がします。これは単純に難化しているだけでしょうか。それとも文章自体は読みやすくなっているなどの調整がありますか?

岡部:古文は文章自体が難化したとは特に感じません。分量もセンター末期から大きくは変わらず、トータルで1500~1600字程度が目安です。同一内容を扱う二文なら筋が頭に入っているぶん、共通点・相違点に注意すればむしろ読みやすい側面もあります。ただ本質的には、文章そのものにガッチリ取り組むより、情報処理(対応づけ・対比)の比重がやや増えた、という感触です。

夏井:現代文はどうでしょう?

長島:文章の難易度はさほど変わっていないと思います。分量もトータルでは同程度。現代文は最初の本文量は従前どおりですが、問6で資料や会話文を追加で読む年があり、そのぶん設問込みの全体分量が増えることはあります。昨年はB5一枚ほどの資料が追加で、今年は会話文で増分は小さめ――という感触です。
二つの文章を意識的に対比させる必要は、私はあまりないと思います。まず目の前の文章に集中して読む。別文が出てきたらそれにも集中して読む。確かに今年も問6の空欄3では二資料の比較が問われましたが、結局は消去法で解けます。設問処理の観点では、複数資料の比較を過度に意識する必要は薄く、現代文における本質は「出てきたものを咀嚼し、問われたことに正確に答える」ことに尽きます。
文章が二つ出ること自体を大げさに構える必要はない――というのが正直な印象です。

 

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