武蔵中学 国語の勉強法|2021年過去問から見る合格答案の書き方
このページでは、武蔵中学校・令和3年度入試(国語)から厳選した問題について、動画とあわせて解説します。
特に、文章読解における「理由説明のまとめ方」と、「比較(味覚と嗅覚)の整理の仕方」に焦点を当てて整理しています。
武蔵中学校・令和3年度 厳選解説動画
令和3年度 武蔵中学校の入試問題から、厳選した問題とその解説をお届けします。
動画では、本記事の内容をベースにしながら、実際の答案の組み立て方まで丁寧に解説しています。
解説
大問一 問二:理由+具体例を組み合わせて説明する
大問一問二は、「水洗式だと~つまらない」に対して谷崎があげる具体例を挙げて説明する問題です。
設問から、次の2点を必ず書く必要があると分かります。
- 「つまらない」と考える理由
- その理由を支える具体例(本文中のエピソード)
設問を読んだ段階で、
・何についての「理由」なのか
・どの「具体例」を挙げる必要があるのか
を先に整理してから、本文に答え探しに行きましょう。
「清潔だとつまらない」理由を本文から整理する
本文では、次のような説明がなされています。
- 「かつて風雅な人は~谷崎は惜しみ憂いていたのです。」
ここから読み取れるのは、
- 風雅な人は、微妙な匂いの違いに気づき、そこから多彩な文化の風合いを感じ取っていた
- しかし、水洗式で清潔さだけを追求すると、匂いが画一化される
- その結果、匂いの「差異」が消え、文化的な味わいも失われてしまう
つまり、「つまらない」と感じる理由は、
風雅な人が楽しんできた「微細な匂いの違い」が、清潔さ・画一化によって失われるからだとわかります。
谷崎があげる具体例を押さえる
次に、谷崎が実際にあげている具体例を確認します。
- 「便所の匂には一種なつかしい~と云う親しみが湧く」
ここから、
- 実家の便所の匂いに、なつかしさや親しみを抱く
という具体例が取り出せます。匂いが、その家や故郷に固有の記憶や感情と結びついていることがポイントです。
答案のまとめ方(理由+具体例を一文に統合)
以上をふまえると、答案は次のような骨組みになります。
- 具体例:故郷の便所の匂いに、一種なつかしい甘い思い出が伴うように、実家の便所でなつかしさや親しみを抱く。
- 理由:風雅な人は微細な匂いの差異に気づき、そこから多彩な文化の風合いを感じ取っていたのに、水洗式では清潔さだけを目指して匂いを画一化してしまい、その微細な匂いが消えてしまうから。
これらを一つの文にまとめると、
「故郷の便所の匂いに一種なつかしい甘い思い出が伴うように、風雅な人は微細な匂いの差異に気づき、そこに多彩な文化の風合いを感じ取るものなのに、水洗式では清潔だけを目指して匂いを画一化してしまうので、その微細な匂いが消えてしまい、つまらなくなるから。」
という形の答案にすることができます。
大問一 問四:味覚と嗅覚を比較して説明する
大問一問四は、「つまり嗅覚は~なのです」とあるが、なぜそのように言えるのかを、このあとに続く味覚との比較を用いて説明する問題です。
・まず「味覚」側の特徴を整理する
・それと対比する形で「嗅覚」側の特徴をまとめる
・最後に「機械技術に適合しにくい」という結論につなげる
味覚:機械技術に適合しやすい感覚
味覚については、空欄Aの直前に、
- 「味ならば~それらを数値化して譜面を作ることができました。」
とあります。ここから、
- 味覚は六つの要素に分解できる
- それらの要素は数値化できる
という点が分かります。
このように、要素に分解し数値に置き換えられる感覚は、機械技術に乗せやすい(適合しやすい)と考えられます。
嗅覚:機械技術に適合しにくい感覚
次に、嗅覚について本文を確認します。
- 空欄Aの3行前:「楽譜のように体系化できないのは、香りには基本臭がないからである。」
- 空欄Aの2行後:「『甘い』香りに感じられるという~それらの強度を数値化することができない」
これらから、
- 香りには基本臭が存在しないため、味覚のように明確に分解・体系化できない
- 香りをグループ分けしようとしても、分類がゆるい括りになってしまう
- 強度を正確に数値化することも難しい
という特徴が読み取れます。
つまり嗅覚は、味覚と違って
「要素分解」も「体系化」も「数値化」も難しい感覚
であり、そのため機械技術に適合しにくいと結論づけることができます。
答案の骨組み
味覚と嗅覚を対比させると、答案は次のような形になります。
「味覚は六つの要素に分け、それらを数値化して体系化できるので機械技術に適合しやすいが、香りには基本臭が存在せず体系化できないうえ、グループ分けをしてもゆるい括りにしかならず、その強度も数値化できないため、嗅覚は機械技術に適合しにくい感覚だから。」
といった構成でまとめると、設問の要求(味覚との比較を使う/機械技術との関係を述べる)をしっかり満たすことができます。
まとめ:武蔵中・国語で求められる読解・記述の力
- 設問を読んだ段階で、「何(理由/具体例/比較など)を書かないといけないのか」を先に整理する。
- 理由説明では、本文の中から「つまらない」「適合しにくい」などの結論を支える根拠を丁寧に拾い上げる。
- 具体例を問われたら、該当するエピソードをそのまま書くのではなく、設問の言葉に合わせて要約する。
- 比較の問題では、A(味覚)とB(嗅覚)をそれぞれ箇条書きで整理してから、差がどこにあるかを文章化すると書きやすい。
- どの問題でも、本文中のどの表現を根拠にしたのかを自分で説明できるレベルまで読み込むことが得点アップにつながる。
動画とあわせて復習しながら、「理由+具体例のセットで説明する力」と、「二つの事柄を比較して論理的にまとめる力」をしっかり身につけていきましょう。これらは武蔵中だけでなく、他校の入試問題にも通用する汎用的な記述力となります。



