中学受験 国語テキスト比較|新演習シリーズと予習シリーズの違いを国語専門塾が解説
普段お使いの中学受験用テキストには、それぞれ固有の長所と注意すべきポイント(弱点)があります。本記事では、代表的な塾教材であるサピックス・四谷大塚「予習シリーズ」・栄光ゼミナール系列「新演習」の特徴を整理し、どのように補強すれば国語力を効果的に伸ばせるかを解説します。
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3分診断:今のつまずきはどれ?(教材併用の目的を先に決める)
「新演習と予習シリーズ、どっちが良い?」は、実は今の課題が“量”なのか“難度”なのか“採点”なのかで結論が変わりやすいです。まずは当てはまるものにチェックしてみてください(目安です)。
チェック(当てはまるものだけ)
- 読解の授業は受けているが、解く量が少なく定着している実感が薄い
- 記述は書くが、1回の授業で扱う問題数が限られ、演習量が不足している気がする
- 難しい問題に当たると手が止まり、やり切れずに積み残しが増える
- 解説は読んでいるのに、次に同じタイプが出ると再現できない
- 記述の自己採点で、どこが点になるのかが分かりにくい
- 教材を増やした結果、復習が回らずどれも中途半端になっている
| 診断結果(多いもの) | まずやる1手(増やしすぎない) | この記事のどこが役立つ? |
|---|---|---|
| 演習量が足りない | まずは「軸の教材」を固定して、量を上積みする場所を1つだけ決める(例:授業で扱わない問題に触れる/aテキスト活用など)。 | SAPIX教材の「弱点と対処法」〜「aテキスト活用」の説明 |
| 難しすぎて消化不良 | 「全部やる」より、取捨選択で“正解の手応え”を作る(難問を追いかけ過ぎない)。 | 予習シリーズの「弱点と使い方のポイント」 |
| 採点・根拠が曖昧 | 記述は要素(何を書けば点か)を意識して採点できる形に寄せる(配点が明示された教材を併用する等)。 | 新演習の「配点の記載がない」話と補い方 |
ここで「何を補うか」を決めてから本文を読むと、教材選びがスムーズになります。
結論:新演習と予習シリーズの違い(早見表)
まずは「何がどう違うのか」を短く整理します。どれが正解というより、目的(演習量/難度/採点のしやすさ)で合う・合わないが分かれます。
| 教材 | 強み(伸びやすい点) | 注意点(つまずきやすい点) | 家庭での補い方(例) |
|---|---|---|---|
| 予習シリーズ(国語) | 解説が非常に詳しく、良問・難問が豊富。丁寧に取り組めれば実力アップにつながりやすい。 | 難問が多く、全部やると「予習シリーズ 国語が難しい/消化不良」になりやすい。 | 取捨選択(やる問題を絞る)+手応えのある難度の問題で成功体験を積む。 |
| 新演習(国語) | 難易度が手ごろで取り組みやすく、「消化不良」になりにくい。 | 上位層には物足りない場合がある。解説の根拠が薄い箇所や、記述に配点の記載がない点がある。 | 上位向けの高難度問題を追加/配点が明示された教材で自己採点感覚を補う。 |
| SAPIX(国語) | A授業(知識)/B授業(読解)で構成。Bは記述中心で、授業が噛み合うと読解・記述を効率よく鍛えやすい。 | 授業内で添削まで行うため、1回あたりの問題数が限られ、演習量が不足しがち。 | 授業で扱わない問題にも触れて演習量を上積み(例:aテキスト活用)/国語専門塾の併用で演習と添削を補強。 |
この記事で扱う塾教材3種
ここでは、次の3つの教材について取り上げます。どれも「良い点」と「注意点」がはっきりしているので、まずクセを押さえるのが近道です。
- サピックスの教材
- 四谷大塚の「予習シリーズ」
- 栄光ゼミナール系列の「新演習」
SAPIX国語テキストの構成(A授業/B授業)と使い方
用語整理:SAPIX国語のA授業/B授業/aテキスト(最小限でOK)
SAPIX国語は、授業の作りそのものに特徴があります。細部まで覚え込むというより、まずは「何が、何を鍛える時間なのか」を押さえるだけで十分です。
位置づけ(この記事での前提)
| 用語 | 何をやる? | 家庭で迷いにくい見方 |
|---|---|---|
| A授業 | 語句・文法などの知識中心 | 「知識の穴」を埋める役。短時間でも繰り返すと効きやすい。 |
| B授業 | 読解中心(記述問題が多い) | 「本文根拠→条件整理→答案」の型を作る役。授業内添削があるぶん、扱える問題数が限られやすい。 |
| aテキスト | (授業で扱わない範囲も含め)演習に回せる素材 | 「演習量を上積みしたい」ときに使いどころが出やすい。増やし過ぎず、補う目的を1つに絞ると回りやすい。 |
本文の「SAPIX教材の弱点と対処法」では、演習量不足をどう補うか(aテキスト活用・併用の考え方)をもう少し具体的に説明します。
SAPIX国語テキストの強み:記述中心で授業の設計がしやすい
サピックスの国語は、授業自体が次の2本立てになっています。
- A授業:語句・文法などの知識中心の授業
- B授業:読解問題中心の授業
特にB授業(読解)のテキストは、ほとんどが記述問題で構成されており、文章は長めでも比較的読みやすく、受験生が理解しやすい傾向があります。そのため、授業が噛み合うと効率よく読解力と記述力を鍛えられる教材と考えられます。
満点に必要な記述要素が3つある問題なら、クラスの状況に応じて「1要素ぶんはヒントとして与える」「残りは自分で考えさせる」といった形で、ヒント量を調整しながら授業ができるため、生徒が自分の頭で考える時間を確保しつつ無理なくレベルアップさせることができます。
SAPIX教材の弱点:授業内添削で演習量が不足しがち
一方で、記述中心の授業には次のような弱点もあります。
- 授業内で添削まで行うため、1回の授業で扱える問題数が4問程度に限られる
- 結果として、こなせる問題数(演習量)が不足しがち
国語に限らず、質だけでなく「量」をこなすことも定着には不可欠です。良い授業を受けても、演習量が足りないと力が定着しづらい点は、家庭学習の設計で補う必要があります。
SAPIX国語の家庭学習:aテキスト活用と「併用」で量を上積みする
そこで、サピックスにお通いのご家庭では、次のような工夫が現実的です。
- 授業では使っていないaテキストの読解問題にも触れて、演習量を補う
- 塾教材 国語の併用(国語専門塾など)で、演習と添削の上積みを作る
このようにして演習量を補強していくことで、授業で学んだ解き方が身につきやすくなります。
予習シリーズ国語は難しい?強みと「消化不良」にならない使い方
予習シリーズの強み:解説が詳しく、良問・難問が豊富
四谷大塚の「予習シリーズ」は、
- 解説が非常に詳しい
- 良問・難問が豊富で、しっかりやり込めば確実な実力アップが見込める
という点が大きな強みです。丁寧に取り組める層にとっては、志望校合格に直結する優れた教材と言えます。
予習シリーズの弱点:難問が多く、全部やると消化不良になりやすい
ただし、予習シリーズには次のような弱点もあります。
- 難問が非常に多く、全てを消化しようとすると「消化不良」に陥りやすい
- 国語が得意でない場合、解いても手応えが感じづらく、自信を失ってしまうこともある
予習シリーズが「難しい/消化不良」になりそうなときの取捨選択テンプレ
予習シリーズは解説が詳しく良問も多い一方で、難問が多く、全部を消化しようとすると苦しくなりやすい教材です。ここでは、無理なく回すための“やる問題の決め方”をテンプレ化します。
やる/保留の基準(目安)
| 区分 | 選び方(短い判断基準) | やり方(最小ステップ) |
|---|---|---|
| 今週やる(優先) | 取り組んだあとに「手応えが残る」難度(本文根拠を追えて、答えの理由が言えそう) | 解く → 根拠に戻る → 直しで理由を言語化 |
| 余裕があれば | 時間はかかるが「あと一歩で届きそう」な問題(復習価値が高い) | 解説を読むだけで終わらせず、同タイプを次に再現できる形で整理 |
| いったん保留 | 難しすぎて本文根拠に戻れない/何が問われているか掴めない(積み残しが増えるタイプ) | 今は深追いせず、取捨選択方針に沿って調整(別テキスト併用も選択肢) |
ポイント:難問に挑み続けて自信を失うより、手応えのあるレベルで「正解する経験」を積み重ねたほうが、結果的に底上げにつながりやすいです。
予習シリーズの使い方:取捨選択とレベル調整で「正解の手応え」を作る
そのため、特に国語が苦手な場合は、次のような工夫が必要です。
- 問題を全てやろうとせず、本人の実力に見合った問題を取捨選択する
- 予習シリーズだけにこだわらず、別のテキストも組み合わせて練習する
無理に難しい問題ばかりを追いかけるより、手応えのあるレベルの問題で「正解する成功体験」を積み重ねるほうが、結果的に国語力の底上げにつながります。
新演習国語の強みと弱点(配点がない問題の採点はどうする?)
新演習の強み:取り組みやすく、消化不良になりにくい
「新演習」は栄光ゼミナール系列の会社から出版されている教材です。特徴としては、
- 難易度が手ごろで取り組みやすい
- 高難度テキストと比べて、「消化不良」に陥りにくい
といった点が挙げられます。標準レベルの受験生にとって扱いやすい教材と言えるでしょう。
新演習の弱点:上位層には物足りない/根拠が薄い箇所/配点記載がない
一方で、新演習には次のような注意点があります。
- 国語が得意な受験生にとっては物足りなさがある
- 上位層は、別途より高難度のテキストを取り入れた演習が必要
- 解答・解説の根拠説明がやや薄い箇所がある
- 記述問題に配点の記載がないため、自己採点がしづらい
特に記述問題については、予習シリーズやサピックス教材では要素ごとの配点が明示されている一方、新演習では「どこまで書けていれば何点なのか」が分かりにくいことがあります。
新演習の補い方:配点が明示された教材・添削で「要素」を押さえる感覚を作る
自己採点を通じて「要素を押さえる感覚」を身につけたい場合は、新演習だけでなく、配点が明示された教材も併用すると効果的です。必要に応じて、国語専門塾などで添削を受け、どこが点になるのかを確認していくのも一つの方法です。
塾教材をどう併用するか(目的別の組み立て)
ここまで見てきたように、
- サピックス:記述中心で質が高いが、演習量が不足しがち
- 予習シリーズ:難問豊富でハイレベルだが、消化不良になりやすい
- 新演習:標準〜やや易しめで取り組みやすい一方、上位層には物足りない・解説根拠や配点情報が弱い
というように、それぞれ長所と短所がはっきり分かれています。
設計の基本:まずは所属塾の教材を「軸」にする
テキスト選びのポイントは、まず所属塾のテキストをきちんと「軸」にして、そのうえで弱点を補うことです。教材を増やす前に、何が不足しているか(量なのか、難度なのか、採点なのか)を整理すると、無理が出にくくなります。
演習量が足りないとき:標準レベルの問題で量を補う
サピックスのように授業内添削が手厚い場合は、扱える問題数が限られます。そこで、授業で扱っていない問題にも触れるなどして、演習量を上積みすると定着しやすくなります。
難しすぎて消化不良のとき:取捨選択とレベル調整を優先する
予習シリーズは良問が多い一方で、全部やろうとすると難度が高くなりがちです。無理に完走を目指すより、手応えのある問題で「正解の感覚」を作るほうが、結果的に安定につながります。
易しすぎて物足りないとき:上位向けの問題・配点明示で「採点感覚」を補う
新演習が取り組みやすい反面、上位層には負荷が足りないことがあります。その場合は、高難度の問題を追加したり、配点が明示された教材を併用して「どの要素が点になるか」を確認したりすると、得点力に結びつきやすくなります。
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よくある質問(教材の併用・採点・家庭学習)
Q. 予習シリーズは全部やるべきですか?
A. しっかりやり込める層には強い教材ですが、難問が多く、全てを消化しようとすると消化不良になりやすい面もあります。まずは実力に合う問題を取捨選択し、手応えのある難度で成功体験を積み重ねる形が現実的です。
Q. 新演習の記述は配点がないと自己採点できません。どう考えればいいですか?
A. どこまで書けていれば何点なのかが分かりにくいことは確かに起こりやすいです。要素を押さえる感覚を作りたい場合は、配点が明示された教材を併用する、あるいは添削を受けて「点になる要素」を確認する方法が有効です。
Q. SAPIX国語は授業だけで足りますか?
A. 授業の質は高い一方で、授業内で添削まで行う関係で、1回あたりに扱える問題数が限られ演習量が不足しがちです。授業で使っていない問題にも触れる(例:aテキスト活用)など、家庭学習で演習量を上積みできると安定しやすくなります。
Q. 塾教材の国語を併用すると、かえって混乱しませんか?
A. 目的が曖昧なまま増やすと混乱しやすいです。まずは「量が足りない」「難しすぎる」「採点ができない」など不足点を1つに絞り、その不足を補う範囲で併用する形にすると、負担が増えにくくなります。
まとめ:テキストの「クセ」を理解し、弱点を補って使いこなす
どのテキストも「完璧」ではありませんが、特徴と弱点を理解し、それぞれを補い合うように組み合わせることで、国語の学習効果は大きく高まります。
- サピックス:記述中心で質が高いが、演習量が不足しがち(aテキスト活用などで上積み)
- 予習シリーズ:解説が詳しいが、難度が高く消化不良になりやすい(取捨選択が重要)
- 新演習:取り組みやすいが、上位層には物足りない場合があり、根拠説明や配点情報が弱いことがある
不足する部分があるなら、別の教材でフォローする、国語専門塾を活用して演習量や記述の添削を補強する、といった工夫でテキストの力を引き出していきましょう。
関連動画
本記事の内容とあわせて、以下の動画でも解説しています。ぜひご覧ください。


